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第350話 悪神
「シンヤさん達、大丈夫かしら」
クーフォは空を見上げながら、小さく呟く。陽の光が燦々と照りつける中、彼女は汗一つ浮かべず両手に嵌めている鉤爪を外した。そんな彼女の足元には無数の屍が転がっていた。
「クーフォ〜もしかしなくても〜心配なの〜?」
クーフォが声の聞こえた方へチラリと視線を向けるとちょうどリームが愛用の武器であるモーニングスターを肩に担ぎながら、やってくるところだった。
「そ、そんな訳ないじゃない!!私はシンヤさんを信じているもの!!」
「でも〜不安なんでしょ?」
「うっ……………それは」
痛いところを突かれたとでも言うようにクーフォは途端にしおらしくなり、いつもはピンと立った狐耳も今はぺたんと垂れてしまっている。
「まぁ、でもそれは仕方ないわよね〜……………だって、この世界のどこかならいざ知らず、天界なんていう訳分かんないところだもの〜」
「そ、そう!!そうなのよ!!だから、私が不安になったり心配したりしても別におかしなことじゃ……………はっ!?」
クーフォは話している途中でリームのニヤニヤとした顔が目に入り、そこから先を思い止まった。
「語るに落ちたね〜」
「くっ!?嵌めたわね!!」
「いや、勝手に自爆しただけじゃない〜」
クーフォは思わず顔を真っ赤に染めながら、そっぽを向いた。一方のリームはそんなクーフォの肩を軽く叩くと耳元で囁いた。
「ごめんね〜ちょっとからかいすぎたみたい〜」
「ふんっ!!知らない!!」
「だから、ごめんって〜………………実は心配なのはなにもクーフォだけじゃないのよ」
「えっ!?」
「みんな心配しているのよ〜当然じゃない。それに今回は今までと違う気がするの…………何か凄く嫌な予感がするわ〜」
思い詰めたような顔で話すリーム。それは本人の語尾が一瞬だけおかしくなったことからも表れていた。
「…………そうね。リームの気持ちも分かるわ。なら、尚更、私達はシンヤさん達を信じてこうして帰りを待つことしかできないわ」
「そうよね〜……………でも、こういう奴らもいるし、退屈はしなさそうで良かったじゃない」
「冗談じゃないわ」
リームがモーニングスターで突っついたのは物言わぬ骸だった。先程まで威勢の良かったその者達はクーフォ達目掛けて、いきなり襲いかかってきたのだ。
「全く……………どこから聞きつけたのか、シンヤさん達がいないと分かった瞬間、同業者の襲撃が後を絶たなくて嫌になるわ」
「それって〜アタクシ達が〜舐められてるってこと〜?」
「単純に彼我の実力差も分からないバカなだけよ……………そういえば、リームの組は一体いくつのクランを潰したの?」
「ん〜……………まだ5つだったような〜」
「あら、随分と遅いじゃない。私のところはもう9つよ」
ドヤ顔を決めて、リームを見下すクーフォ。それを見たリームはジト目になって、問いかけた。
「…………さっきの仕返し〜?」
「さぁ、どうかしらね」
不敵な笑みを浮かべたクーフォはくるりと身体の向きを変えて、その場を後にした。
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ところ変わって、ここは天界のとある場所。長年、囚われていた悪い神…………いわゆる"悪神"達は捕らえていた側のミスにより解き放たれ、上級の神達に不満が溜まっていた下級の神達と手を組み、巨大な連合軍と化していた。
「派手にやれ!!」
「今まで溜まったものを最大限、吐き出せ!!」
「「「「「うおおおお〜〜〜!!!」」」」」
そして、現在……………彼らは天界の至るところを襲撃し、上級の神達への報復を行っていた。もちろん、上級神達もこれをただ黙って見過ごすはずがない。配下達を総動員し、戦場へ次々と送り込んでいる………………のだが、
「ぐはっ!?」
「な、何だこの強さは!?」
「ま、まるで歯が立たない!!」
彼らの溜め込んだ怒りや恨みはその程度で退けられるものでは到底なく、救援も辿り着いた瞬間、塵となってしまっていた。
「まだだ!!俺達の燃え上がるこの怒りは、恨みは止まらねぇ!!覚悟しろ、上級神!!」
そこでは地を駆ける彼らの足音がいつまでも鳴り響いていた。
―――――――――――――――――――――
「ん?そろそろか?」
「ですね。さぁ、戻りましょうか」
「どのくらい強くなっているのか楽しみですわ」
「腕が鳴るな!!」
「やっと、潰せる」
「ふふふ…………疼きますね」
「待ちくたびれたのぅ」
「来たか。我の進化した槍捌きを披露する機会が」
「みんな落ち着けよ。それと俺の獲物は取るなよ?」
「その台詞、そっくりそのまま返すデス」
「心配しなくても敵は掃いて捨てる程いるの」
「よ〜し!!やるぞ〜!!」
「ふんっ。アンタ達、まるで子供ね………………で?敵はどこ?」
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