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第356話 敵の正体
「運の女神、フォルトゥーナよ。此度の件、分かっておろうな」
「…………はい」
「よりにもよって、我々がミスを犯したなどと言いおって」
「それもたかが人の子になど」
「恥を知れ!!貴様は神の風上にもおけん!!」
「……………お言葉ですが、恥を知るのはどちらでしょうか?」
「何だと?」
「創造神様達がミスを犯したのは事実でしょう?それに一体誰のせいで天界のあらゆるところが被害を受けているのか………………」
「貴様っ!!」
「あと"たかが人の子"?その人の子はあなた方の尻拭いの為に現在、天界を飛び回っているんですよ?いわば天界にとっても私達にとっても救世主のような存在。そして、何より私の大事な大事な息子。私は何を言われても構いません。でも………………ジジイ共がよってたかって愛する息子を責め立てているのは許せないわ」
「口を慎め!!中級神ごときが!!」
「我々にそんな口をきいたんだ!!覚悟はできておろうな!!」
「そんなのとっくにできてるわ!!私はどうなっても構わない!!だけど、約束して!!絶対にシンヤ達に感謝と謝罪を告げると!!」
「中級神風情が我々に意見するな!!」
「ましてや頼み事など以ての外じゃ!!」
「何故、我々が人の子などに頭を下げねばならん!!」
収まる気配のない神達の怒号はフォルトゥーナの精神をジリジリと削っていった。そして、それも我慢の限界にきたのか、彼女はボソッとこう呟いた。
「…………はぁ。口で言っても分からないような頭の硬いお爺ちゃん達には実力行使しかないわね」
直後、フォルトゥーナの身体からはとんでもない量の神気が溢れだしたのだった。
―――――――――――――――――――――
「見つけた…………まさか、お前とこうして再び対峙することになるとはな」
「久しぶりだな、シンヤ・モリタニ。俺はずっとお前に会いたかったよ」
「俺は二度とその面を拝みたくなかった」
リース達を看取ったシンヤはすぐに行動を開始し、1人の人物を追いかけた。その人物とはリース達を亡き者にした張本人だった。
「俺の仲間に手をかけた覚悟はできてんだろうな?」
「仲間?……………あぁ、あの雑魚達のことか。何だ、あんなのを仲間にしているのか」
「……………今、何て言った」
「だから、あんな使えない奴らを仲間にしているのかと言ったんだ。主人の留守も守れない役立たずを持って大変だな。同情するぞ」
そんな敵の言葉に対して、無言で刀を抜いたシンヤはその切っ先を相手の方へと向けて、こう言った。
「俺はお前を絶対に許さない……………覚悟しろ、アーサー・ラゴン、いやハジメ」
「それは俺の台詞だ!!やっと来たぜ!!お前に復讐するその時が!!」
「こちら、ティアです…………あ、カグヤですか。どうしました?」
「奴らの殲滅が完了したぜ。アタシももう上に戻ってもいいか?」
「ええ。すぐにでも……………急遽、お伝えしなければならないことができたので」
「おいおい、そっちもかよ。実はアタシもなんだ」
「そうなんですか」
「悪いが気になるから、簡潔にどんなことが起きたか教えてくれないか。詳しくは戻ってから聞くからよ」
「…………分かりました。では心して聞いて下さい」
そうして少し間を空けたティアから放たれた言葉はカグヤの予想外のものだった。
「先程、お義母様が上位の神達に武力で以て挑み、結果……………現在は危篤状態にあるそうです」
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