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第9話:学院のその後
「うわぁ〜……………ここがセントラル魔法学院かぁ」
立派な校門を潜り抜けた先にある大きな学院を見て、とある生徒が呟く。
「凄いよな〜。おかげで入学志願者がとんでもないから、入るだけで一苦労だったぜ……………あんたも新入生だろ?」
「うん。僕はソード、よろしくね」
「俺はシールド・マジル。よろしくな!」
「マジル……………失礼かもだけど、君は」
「ああ、貴族だぜ。だが、まぁそんなこと関係ないだろ。ここは以前の学院じゃないんだからさ」
「うん。そうだよね。あ〜あ……………もし、姉さんが今年の新入生だったら、どうなってたのかな」
「姉さん?あんた、姉さんいんのか?」
「うん、そうだよ……………っと、ほら。あれ」
そう言って、少し遠くを指差すソード。その先にはとある像が立っていた。
「うん?あれはここの卒業生のセーラ先輩の像じゃねぇか。確か、在籍時に起こった数々が伝説として、この辺りじゃ語り継がれているんだっけな。俺も色々と噂に聞くぜ……………って、ちょっと待て!あんた、今何て言った!?」
「え?あれが僕の姉さんだって」
「ってことは何か?あんたはあのセーラ先輩の弟だってことなのか?」
「うん。会話の流れ上、そうなるね」
「こりゃ、驚いた」
「なんか全然そんな感じしないけど」
「いやいや。人って驚きすぎると逆にこうなるぜ」
「そうなんだ」
「ってことはだ!あんたの姉さんは今、あちらの人と一緒にいるってことか!?」
そう言ってシールドが指差した先にはこれまた像が立っており、それはこの学院の中で最も大きな像だった。
「うん。たまに手紙が送られてくるよ。今日は何があったとか、どんなものを見ただとか…………どうやら、色んなところを旅してるみたい」
「へぇ〜……………そりゃ、あのクランに所属してりゃ、そうだろうな。でも、危険な香りがプンプンするのは何故だろう」
「確かにね。実際、普通の高ランク冒険者なら、とっくに死んでるって言ってたよ」
「だろうな。あのクランだもんな。そのリスクと引き換えに俺達には想像もつかない経験をしてるんだろうが」
それからシールドとソードは揃って、黙ったまま像を見つめた。そこにはセーラとシンヤのだけでなく、特別講師をした全員分の像が立っていた。
「凄いよな〜……………俺もいつかはあんな存在になれるのかな」
「それは本人次第だよ。現に僕は姉さんに憧れて、こうして入学を果たした訳だから……………いよいよ始まるんだ。僕の物語が」
「お、なんか主人公みたいな口ぶりだな」
「そのぐらい強い意志じゃないとダメだってことだよ。言っておくけど、僕はめちゃくちゃ頑張るよ…………シールドなんか置いてちゃってさ」
「お、言うねぇ〜…………んじゃ、俺もあんたに負けないよう頑張らないとな!………………ってことで!ここから教室まで競争だ!!」
「あ、待ってよ!」
「待たねぇよ〜もう勝負は始まってんだ!」
「いや、そういうことじゃなくて!どこのクラスかもまだ確認してないでしょ!」
「……………あ」
「全く……………もう、この時点で僕と君の差はついてるよ」
「なんだと〜!」
「うわっ、やめてよ!髪がぐしゃぐしゃになるじゃんか」
「へへっ!油断してるから、こうな…………って、おい!?水をかけるのはなしだろ!」
「そんなの聞いてないよ〜だ!うりゃ!」
「くそっ!やったな!!このっ!!」
「このっこのっ!!」
「初日から遅刻とはいい度胸ですね。ソードさん、シールドさん」
「「すみませんでした」」
「はぁ、全く……………いいですか、皆さん!初日といえど緊張感を持って、学生生活を送って下さいね?くれぐれも彼らのようにならないこと」
「「「「「は〜い」」」」」
「「お前のせいだからな!!」」
「こらっ!あなた達!」
「「ふんっ!!」」
「今年の新入生はどうですか?」
「早速、遅刻してきた大物が2名いましたよ」
「そうですか」
「まるで他人事ですね、理事長」
「いえいえ。感心しているんですよ。やはり、そういう生徒がいないとつまらないじゃないですか」
「何を仰っているんですか。担当する私達の身にもなって下さいよ」
「あ、そういえば新入生の中にセーラさんの弟さんがいると小耳に挟んだんですが」
「露骨な話題逸らしはやめて下さい」
「何のことです?」
「はぁ……………ええ。いらっしゃいますよ」
「そうですか。さぞ優秀なんでしょうね」
「そう思うでしょう?ところがどっこい。なんと遅刻してきた生徒のうち1人がその弟さんなんですよ。全く……………どうやら姉と違って弟の方はそうでもないようです」
「はっはっはっ!それはそれは……………確かにとんだ大物ですね。もちろん、いい意味で」
「はい?私のは悪い意味で言ったんですけど」
「まぁ、まぁ。いいから、その子を見ていなさい。きっと凄いことになるでしょうから」
「はぁ……………」
「大成する人というのはどこかしら、そういう部分があるものです………………ところで話は変わるんですが彼らへの打診は?」
「断られました。そういうことはもう二度とする気はないと」
「でしょうね。自由を求める彼らには本来、必要のないもの。一度引き受けて頂けただけでもとんでもないことです」
「ですね」
「はい。その彼らのおかげでこの学院は良い方向へと進んでいけているのです………………またお菓子か何かでもお送りしておきましょう」
「あ、それなら良いお店を知っているので今度連れて行ってあげましょうか?」
「それは結構です。あなたと行くと関係ないものまで買わされますので」
「ちっ」
「えっ!?舌打ちした!?私、これでも理事長ですよ!?」
こうして今日もセントラル魔法学院は平和な日常を送っている。その裏でたまに理事長が泣くことはあるが………………
「よし。今度の飲み会、理事長は省いておこうっと」
「そ、そんな殺生な〜!」
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