4、ポケットの中

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4、ポケットの中

 次の日、凛花は一日中、とろとろと低空飛行の眠りを貪った。  水に溶いた片栗粉が白く重く沈んでゆくような、そんな寄る辺のない睡眠だった。  ぼんやりと夕方まで寝て、さすがに目が冴えて起きる。  長い眠りの間、夢はひとつも見なかった。  いや、思い出せないだけだ。すぐ傍にあるものを見失うのと同じで。  重いまぶたを再び閉じる。久しぶりにあの夢を見た、そんな気がした。兄を助けようと手を伸ばす、あの夢だ。  今回も助けられなかったんだろうか。そう思ったあと、凛花はゆっくりと目を開けた。  ──助けてほしいと手を伸ばすのは、私なのかもしれない。  深い穴に手を差し入れ、指先が届くまで懸命に手を伸ばす。ほしい時に必ず触れるわけじゃない。ふとした時、そこに手があることに気付くのだ。  ポケットに手を入れてみてはじめて、指先の冷たさを知るように。その湿った温もりは、他人からは見えない。  私の家族はポケットの中にいる。 (了)
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