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 俺が見たものは、幻でも、夢でもない。  ぱちんと蓋を閉じて懐中時計をしまい、俺は目を閉じた。ポケットの中で時計をぎゅっと握りしめる。あの日、父が俺の手を握ってくれたように。  秒針の規則正しい音と電車の音が、いつまでも耳の中で響いていた。
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