捨てる神あれば拾う神あり

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何となくは、そうじゃないかと。いや、それでもやっぱりきっと違う。 そう信じていた相手にアッサリと裏切られた。 しかも自分の誕生日に。 北条 春  22歳 「バッカヤロ〜〜〜!!」 時間はすでに深夜12時を回り辺りは街灯しかなく薄い暗闇に包まれている。 春は橋から身を乗り出し大声で叫び続ける。 「クソったれ!浮気野郎!◯漏のくせにー!!」 などと可愛い口からおよそ想像もつかない汚い言葉を吐きまくる。 ずっと好きだって言ったくせに。 あんなに愛したくせに。 クソ野郎。。。 頭は怒りで沸騰しているのに体は芯から冷えていて震えがくるほどに体中が痛んだ。 もう嫌だ。 何もかも。 春は橋に足をかけて身を乗り出す。 あと少しもう少しで向こう側に体を投げ出す一歩手前で、首元を力強く引っ張られた。 ドスっ。 バタンっ。 体を地面に叩きつけられてあまりの痛みに声も出ない。 「おい。人様に迷惑かける死に方すんじゃねぇ」 低いバリトンが頭の上から響き春は痛む体を支えながら上を向く。 鷹だ。 まるで射抜かれるように鋭い眼差しをした黒ずくめの男が真上から春をジッと見下ろしている。 光沢のあるスーツに磨き上げられた靴。 それに見合った鍛えられているであろう体格はスーツの上からでも分かるほどに逞しい。 まさに、夜の帝王のような風格に、ヤベェひとに見つかった感が否めず春はその場に固まって動けなくなった。
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