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あれから、周りが襖で仕切られた畳の部屋に通され茶菓子が春の目の前に置かれた。
「少しお待ち下さい」
それだけ言われてすでに小1時間は経っているような気がする。
せっかく出してくれたが、何が入っているかも分からないので茶菓子には一切口を付けずにジっと正座して待つ。
あの面子じゃ、迂闊に部屋を出る方が危ない気がする。
この部屋といい門構えといい普通の家ではない事は一目瞭然。
きっとその道の人なんだろうな。
どうしよう。
もしかして、臓器摘出とかされた上にポイされるのかな。
だって自分の価値なんてもうこの体しかない。
そんな事を考えていると、バンっと扉が勢いよく開かれた。
体格がいいとは分かっていたが、自分が座った位置から見上げるとかなり身長が高い。しかも何等身なんだろうか。と疑問に思うくらいスタイルがいい。
何より、黒い光沢のあるスーツの輝きに一切負けていないオーラを纏っている。
いや〜イケメンだな。
回らない頭で思い浮かぶのはそんな陳腐な言葉で春はぼ〜としたまま上を見上げていた。
「何だ。口にあわなかったか?」
へ?
「和菓子は好みじゃないか?」
目の前に出された菓子は確かに美味しそうな和菓子が並んでいる。いつもなら喜んで手を伸ばすが今は喉に通る気がしないし、何より安全性が分からない。
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