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授業が終わり圭斗と二人、バスで15分の所の『Rock』へ向かう。
「そのうち夕飯の時間だ。混んでいないと良いな」
圭斗は私をバスのひとり席に座らせ、その横に立つ。
混み合うバスの車内で私を守るように。
圭斗の優しさのひとつひとつが身に染みる。
見上げると、圭斗と目が合い微笑み返される。
バスを降りる頃には圭斗と付き合っても良いな、そんな気分になっていた。
「……パフェじゃ無くて、ゆっくりお酒が飲めるところに行こう」
バスを降りて間もない歩道。
震える手で圭斗の袖の裾をキュッと掴み、真っ直ぐ圭斗を見つめて言った。
圭斗も私も既に20歳。
バーなんて行ったことはないけど、圭斗と良い雰囲気になれたらと思った。
決してその先の事を考えているわけではないけど、今の私なら何でも受け入れてしまいそうだ。
圭斗は嬉しそうな困ったような顔を繰り返した後、急に真顔になった。
その表情にドキッとした瞬間……。
―――むにっ。
圭斗は真顔のまま私の鼻を思いっきりつまんだ。
「阿保。何があったのか知らないけど、自暴自棄になっているんじゃねぇよ」
「ふががっ!」
ち、違う!そんなつもりじゃない!ってそれより鼻の脂……!
最近お肌のお手入れすら怠っている事を思い出して、皮脂が気になってしまった。
私は圭斗の手を振り解き、すかさずその手をハンカチでゴシゴシ拭き取った。
恥ずかしすぎて、もう泣きたい!
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