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バス停から離れていないせいか、一気に歩道を歩く人が増えた。
私はうつむき圭斗の右手を握ったまま、動けないでいる。
皆、私達を避けて歩く。
ふぅっ…と圭斗の小さなため息が聞こえた。
人通りが途切れた頃、ふと圭斗の左手が私の真横でグーパーを繰り返し、ウロウロいる事に気がついた。
その瞬間、その圭斗の手が私の頭を撫で、自分の胸に引き寄せた。
「すっぴんも悪くないけどな、俺を誘うなら口紅をキレイに引いてからにしろ。せめてもの礼儀だろ」
……確かに。一度は振った相手に、ボロボロの状態で誘うなんて失礼だ。
―――私の事好きなんでしょう。光栄に思いなさい。
って言ってるみたいで、自意識過剰にも程がある。
私は圭斗の胸の中で、申し訳なささと恥ずかしさで赤面していた。
「今日はもう帰ろう。今年も『紅葉パフェ』を逃すことになるけど…来年こそ行こう」
圭斗がぎゅっと私の頭を片腕で抱きしめる。
圭斗の胸に顔を埋めることになっている私は、どちらのかわからない大きな鼓動を耳にする。
優しい、どこまでも優しいな圭斗は。
来年の話をする事で、私の事を嫌いになったりしないって伝えてくれる。
「うん…、ありがとう、圭斗。ごめんね……」
圭斗の手を離して、ぎゅっと抱きしめたい気持ちをグッと我慢した。
今の私じゃダメ。
ちゃんと気持ちに整理をつけてからにしないと。
でもどうやって?5年間消化不良の末、拗らせた相手よ?
失恋決定の相手に告白出来るほど、私のメンタルは強くない……。
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