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大切にしたい想い
「恭子……まだダイエットしているのか?」
『20歳の集い』から1週間後、大学の講義室で私の隣に圭斗が座り、尋ねる。
「え、う~ん。程々に頑張っているよ。何で?」
「いや、『Rock』で『スペシャルチョコパフェ』発売だから…式も終わったし行くかな、と思ったけど……」
「けど?」
私が圭斗を見つめると、圭斗はふっと顔を逸らした。
「化粧しているから、まだ甘味制限しているのかと思って」
化粧……。
そういえば前にパフェに誘ってくれたときは化粧していなかったな。
失恋して、何もかもがグダグダになっていた。
「もしかして…彼氏でも出来た?」
圭斗の情けない顔に思わず吹き出してしまう。
「違うよ。キレイに口紅が引けるようになって、今度こそ圭斗をお酒に誘うんだって努力しているの」
私の微笑みに、驚きを隠せない圭斗が椅子からズリ落ちた。
「だけど今はお酒よりチョコパフェだな。いつ行く?」
椅子の下から這い出た圭斗は立ち上がり、嬉しそうにガッツポーズをした。
今はまだだよ、まだ。
だけど、そのうち……ね。
私は新たに芽生えたこの想いをポケットの中に入れっぱなしにせず、ゆっくり育てるつもりだ。
(おしまい)
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