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ふと廊下から外を見た私は、校門から昇降口へ向かって歩いて来る浩輔と浩輔のママに気がついた。
―――浩輔、もしかして東工業高校落ちたの!?
大概、県立高校不合格者は今後の方針を決めるため、保護者と一緒に中学校へ登校する。
合格者と鉢合わせすることの無いように、不合格者は少し時間をずらして先生に相談しに来るのが例年というが…。
「うわ、浩輔落ちたのか」
理奈ちゃんが小声で話す。
「やっぱりそうだよね…」
県立高校に落ちたとなると、流石に告白どころじゃない。
話しかけることも気が引けてしまう。
県立高校に落ちたとなると、私立高校か一部の県立高校の二次試験。
どちらも東高校方面とは逆の路線だ。
パタパタパタ……。
静まり返った廊下に、私と理奈ちゃんのスリッパの音が響く。
そして、向こう側からもスリッパの音が近づいて来る。
パタ、パタ、パタ……。
私達は浩輔たちと目を合わさないように、視線を落としながら歩いた。
パタパタパタ……。
パタ、パタ、パタ……。
浩輔も私達に声をかけることはなかった。
すれ違う瞬間、きゅーっと何かを背中から引っ張られるような胸の苦しみを感じた。
パタ、パタ、パタ……。
浩輔のスリッパの音が小さくなっていく。
私は震える手で制服の上からラブレターを握りしめた。
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