ポケットの中に忍ばせた想い

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ポケットの中に忍ばせた想い

「待って恭子!クリーニングのタグ付けっぱなしよ!」  浮かれたまま玄関に向かう私をママが呼び止める。 「どこよー。もー、取っといてよぉ!」  上着を脱ぎ、タグを探す私。 「そもそも、なんでもうクリーニングに出しちゃうかなぁ」  襟の内側から飛び出たタグを見つけ、引きちぎる。 「だって、セール期間だったのよ。今日がクリーニング店お休みじゃなくて良かったわ」  ケラケラ笑うママを尻目に、私はポケットの中を確認し「行ってきます!」と元気よく玄関を飛び出した。  今朝、高校の合格発表があり、自宅からネットで私の受験番号が合格者欄に載っていることを確認した。  やった、春から東高校生だ!  早速東高校へ入学説明会用の資料を受け取りに行こう、と一緒に受験して合格した里穂ちゃんと電車の時間を合わせる。 「あれ?制服が無い…」  この時点で、私のクローゼットに中学校の制服が無いことに気がついた。  いや、私服で高校に入れないでしょう!  ちゃんと『制服着用の事』って中学校からの資料に書いてあるし! 「ママ、制服が無いんだけど!」  おばあちゃんに喜びの電話をしていたのだろうママは、私の状況を把握し、大慌てでクリーニング店へ走った。
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