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◇
「っ!?」
目を開けると大学時代からひとりで暮らす、見慣れ過ぎた俺の部屋。
「……夢?」
ぶるぶるっとベッドに振動が伝わってどきっとする。
見ると怪しい端末ではなく俺のスマホがアラームの振動を伝えている。
「…夢か」
アラームを止めてマナーモードを解除する。
なんでマナーにしてたんだろう。
室内は俺の他には誰もいない。
「……智」
なんだろう。
わけわかんないのに寂しい。
なんとなく寝返りを打って大きく息を吐く。
「智…」
夢か。
アリスショッピングモールも、智も。
非現実的な空間は本当に非現実で、非現実的なイケメンも本当に非現実だった。
心にぽっかり穴が空いたような感じ。
その穴を冷たい風が吹き抜ける。
すーすーして変な感じ。
「シャワー浴びよ」
身体を起こすと腰に違和感。
?
なんで?
浴室からはシャワーの音がする。
誰?
シャワーの音が止まったので恐る恐る浴室のドアを開けると非現実のイケメンが。
「アリス、起きたんだ?」
「……」
「寝ぐせついてるよ」
イケメンが俺の髪を撫でる。
湯気でもやもやしてるけど天井は高くなったり低くなったりしてないし、壁も飛び出してきたり引っ込んだりしてないし床だって波打ってない。
でも非現実的なイケメンは現実で俺にキスをした。
END
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