観賞用イケメン。

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朝だ。 自由の朝。 「タケ、おはよ…」 ………。 全然自由になってないじゃん! なにこれ? なんでまだ“タケ”が口から出てくんの!? 気を取り直して。 「おはよう俺! 自由の俺!」 うん、これでいい。 なんか寂しい気がするのは絶対気のせい。 あんなやつがいなくたって俺は大丈夫。 足取り軽く出勤する。 会社の前でチョーカーを外す必要がない。 もう変な目で見られない。 …のに。 昼に社食でうどんを食べていたら、なんか変な感じがする。 心がすーすーする。 スマホをチェックしても武登からはなんの連絡もない。 たいして俺の事、好きじゃなかったんじゃないの? そう思ったら視界がじわじわ滲んできたので慌ててうどんを食べる。 俺、おかしい。 別れたくて別れたんだから、すっきりしていいはずなのに全然すっきりしない。 タケの『マサ』って呼ぶ声が聞きた…………。 こんなのおかしい! 一年半もべったり武登がそばにいたから、なんとなく風通しがよくなり過ぎてるだけだ。 別に武登が恋しいとか、そんな事は絶対ない! 会社帰りにちょっと賑やかな街まで出る。 もう俺は抱かれる側じゃない。 武登と付き合う前みたいに、女を抱く生活に戻る。 ホテヘルの受付所前で深呼吸。 昼休みにチェックして決めたちょっとお高めの店。 武登と付き合う前は、よくこういう店にもお世話になった。 なんかするすると女の子とコースを選んで、その子…サナちゃんと近くのホテルに向かう。 …なんでだ。 なに話したらいいかわからない。 サナちゃんが色々話しかけてくれるのに必死で一言答えるばっかりで、俺からはなにも話しかけられない。 腕を組まれたら鳥肌が立った。 なんでだ。 ホテルに着いてからも俺は変わらずで、サナちゃんが色々してくれるけど、最悪な事に勃たない。 勃つ気配すらない。 というか色々されればされるほど気持ちも萎えていく。 サナちゃんはずっと頑張ってくれたけどだめだった。 最後は、緊張してるだけだよねって慰めてくれたけど、俺はもう立ち直れないまで落ち込んでいた。
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