観賞用イケメン。

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「はい」 ホットミルクの入ったカップを差し出される。 「…ありがと」 受け取って口を付けると身体の芯がじわっと温かくなった。 ソファに座る俺の隣に武登も座る。 「で?」 「?」 「家出はおしまい?」 小さく頷くと武登がまた俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。 「気が済んだ?」 「…ごめん」 「荷物はどうした?」 「あ…」 ビジホに置きっぱなしだ。 夢中で飛び出してきたから…。 「明日俺が取りに行くから」 「いいよ、自分で行く。どこのホテルかもわかんないだろ」 「わかるから部屋番号だけ教えて」 「え?」 「ほら」 スマホの画面を見せられる。 俺の泊まっていたビジホのホームページ。 なんで? 「??」 「わかんない?」 「わかんない」 ほんとにわかんない。 「マサのスマホの位置情報、俺のスマホで確認できるようにしてあんの」 「え」 「俺から逃げたつもりだった?」 言ってる事と正反対な優しい微笑み。 たった一日なのにこの笑顔が恋しかった。 思わず抱きつくと、武登は俺を抱き留める。 「武登…ごめん」 「うん」 「そばにいて」 武登が俺の頬をなぞって、それからひとつキスをくれる。 「あの無言電話、マサだろ」 「? 無言電話?」 「コールセンターにかけてきたやつ」 あ…。 「…なんでわかるの?」 「マサの事はわかるよ」 「そっか…」 嬉しい、かも。 「で」 「で?」 「どうだった?」 「なにが?」 今度はなんだろう。 また武登がスマホをいじって俺に見せる。 そこに表示されているのは…。 「!!」 「ホテヘル、行ってたよな」 俺が行ったホテヘルのホームぺージ。 ぐっと首を掴まれて、唇が重なる。 深くを求められるキスにくらくらして、武登の胸を叩いたら唇が離れた。 「お前、チョーカーどうした」 「あ…ビジホの荷物の中」 「なに外してんだよ…」 ぶつぶつ言いながら武登は自分の部屋に行ってすぐに戻ってくる。 「ほら」 「え…」 今までのはチョーカーって言えばチョーカーで通る感じだったけど、これはほんとの首輪…っぽい。 「着けてやる」 「…うん。これ、人間用?」 「大型の猫用。マサ、首細いし」 「ねこ…」 武登がちょっと不機嫌に首輪を着けてくれる。 こういうの、ほんと嫌だったはずなのに。 もう飼われて束縛される生活なんて嫌だったはずなのに。 …ほっとする。 「武登は今まで付き合った彼女にもこういう事してた?」 「ん?」 「それとも俺だけにこういう事してる?」 なんか心がもぞもぞするから聞く。 「マサはどっちがいい?」 意地悪な微笑み。 どきどきする。 恥ずかしさに俯こうとすると、首輪に指を引っ掛けて、くっと引っ張られた。 「どっちがいい?」 嫌だったはずなのに。 武登と一緒にいるなんて絶対もう無理って思ったのに。 「…俺だけがいい」 そう答えて俺からキスをすると、武登は満足そうに笑む。 「よくできました」 今度は優しいキス。 武登の手が太腿の間を滑ると条件反射で腰が跳ねる。 「で、どうだった?」 「なにが…?」 「ホテヘル」 思い出したくない。 「答えろ」 また首輪を引っ張られる。 「…武登じゃなくて気持ち悪かった」 武登が欲しい。 武登だけに触れられたい。 「ん。で?」 「俺、武登じゃないとだめなカラダになっちゃった」 「当たり前だ。そうなるようにした」 武登の手が下着の中に滑り込む。 「もう勃ってんじゃん」 「…うん」 そのまま手が昂りをなぞって、軽く扱かれたら眩暈がするほど気持ちいい。 ホテヘルで萎えっぱなしだったのが嘘のように、武登がくれる刺激に身体が熱くなってどうしようもない。 手が肌の上を滑っていって、奥まった部分に触れる。 ぞくっと、期待と快感が混じり合って背筋を駆け上がっていく。
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