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暴君王子としもべ姫
社会人×無職・年下×年上・美形×平凡
いつかいつか理想の王子様が現れる…そう妄想していた乙女思考な恵介(けいすけ・受け)と、見た目は王子様でも中身は暴君な集(あつむ・攻め)の話です。
*****
「集と別れて」
「……」
そんな事言われても…。
「てか恵介くん、自分が集と全くつり合ってない事、わかってないの?」
「……」
それはよーくわかってる。
「集は優しいから、ひとりで可哀想な恵介くんに同情してるだけなの。集に愛されてるなんて勘違いしちゃだめ」
「……」
「さっさと集のそばからいなくなってね。邪魔だから」
そう言って律希さんは去って行った。
俺はなにも言い返せなかった。
◇
俺は昔から乙女思考だった。
そして小さい頃から好きになるのは男性。
でも地味で平凡な俺の前には王子様は現れなかった。
…これは俺の理想が高過ぎたのも原因だっていうのはわかってる。
それにプラスして、俺にMっ気があったのも悪いと思う。
王子様にいじめられたい願望を持ったままひとりで時を過ごしていた。
それでも、いつかいつか王子様が現れて、俺を運命の相手だって言ってお城に連れて行ってくれたら…と妄想し続けた。
そんな風に彼氏が一度もできた事のないまま32歳の誕生日を迎え、その日をひとりで過ごすのが嫌でいつものゲイバーに行った時に現れたのが集だった。
王子様な見た目の集が、目が合った途端に突然俺をバーから連れ出し、そのままホテルへ連れ込んだ。
わけもわからず固まる俺の身体と心を強引に開いて、集は挿入り込み、そして入り込んできた。
強引さにどきどきしている俺に集は囁いた。
「お前は俺のものだ」
心臓が爆発するかと思った。
「一生俺のそばにいろ。俺の言う事に逆らうな」
…王子様は暴君だった。
そして俺が望んだ通り、俺をいっぱいいじめてくれた。
それからすぐに王子様のお城…もといマンションに迎え入れられた。
王子様は俺より年下なのに高給取りで…どこに行っても王子様だった。
でも、俺の前でだけ暴君が姿を現す。
その特別感にも俺は酔った。
暴君で意地悪な王子様は、俺をいじめては優しく微笑む。
王子様がしたくなったら場所は関係ない。
俺を抱く王子様…集はすごく熱い瞳で俺を見るから、俺はいつも血液が沸騰して止まらない。
集しか知らない身体を暴かれて強引に開かれる事にぞくぞくする毎日を送って半年。
周りは王子様が暴君だと言う事は知らないみたいだから、たくさんの嫉妬の視線を向けられる。
その中でも、俺と集が出会う前から集のそばにいた律希さんは事あるごとに俺に集との別れを迫ってくる。
そして今日もまた…。
でもそろそろ潮時なのかなとも思う。
集の気まぐれで相手をしてもらっている俺は、本当に集が大好きだけど、でもいつまでも集のそばにいるのはよくないんじゃないか。
だって俺がそばにいたら集は心から愛する人と出会えない。
その相手が律希さんかどうかはわからないけど、少なくとも俺より確実に集につり合う人だ。
そういう人とくっついたほうが集のためだとも感じる。
でも俺は別れを切り出す勇気がない。
好きだから。
集の存在に慣れた心も身体も、ひとりに戻る事を嫌がる。
とぼとぼと集の部屋に帰ると、なぜか集がいる。
「どこ行ってた?」
「えっと…ちょっと散歩」
集は俺が自由に外出するのを嫌う。
「帰ってくるの早いね」
「…ああ」
不機嫌だ。
集が視線で自分の足元を示すので、そこに膝をつく。
「散歩、楽しかったか?」
「……ひとりだったから寂しかった」
これは本当。
この半年で集がいつもそばにいる事を教え込まれた俺は、隣に集がいないと寂しくてどうしようもない。
集が俺の髪を撫でるのは、いつもの合図。
集の履くスウェットと下着をずらして、昂りを口に含む。
「…恵介、ほんといつまで経ってもヘタ」
「ん、ぅ…」
上目に集を見上げると、それでも頬を上気させていて、色っぽさにぞくっとする。
口の中のものがどんどん硬く昂っていく。
集が俺を抱きかかえて、奥の部分に指を挿れる。
身体が熱に燃えていく。
昂りがそこに挿入ってきて、俺を満たす快感に大きく喘ぐ。
集は満足そうに微笑んで、俺を追い詰めていく…。
ごめんなさい、律希さん。
集の言う事は絶対なんです。
集が『俺と別れろ』って言わない限り、俺は集から離れられないんです。
集は気まぐれでも、俺は集がほんとにほんとに大好きなんです…。
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