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火曜日の答え
高校生・同い年
脱童貞と同時に彼女にフられた辻居が、ヤれれば誰でもいい男子・吉岡に指導をお願いしたら食われちゃっただけの話です。
*****
「無理」
辻居颯汰、十六歳。
脱童貞と同時に彼女にフられた。
◇
「吉岡様」
「誰?」
「隣のクラスの辻居と申します。ぜひ貴方様にご教授頂きたい事が」
「その言葉遣いやめたら話聞いてもいいけど」
「……ここではちょっと」
長身に茶髪の男子生徒に頭を下げる俺。
周りからどう見えていようと、この男に頼るしかないと思う。
「んじゃ、移動しよ」
そう言って歩き出す吉岡。
優しい人だ。
どこに向かうんだろうと思ったら別棟の資料室。
入学してから半年くらい経つけど一度も入った事ない。
別棟自体ほとんど来ないし。
ドアを閉めて吉岡が隅の床に座り込み、俺にも座るように目線で促すので隣に座った。
「話ってなに?」
「実は…」
ここまでの経緯。
高校生活が始まって少ししたくらいに人生初の彼女ができた。
同じクラスの森本美美。
名前の漢字が『々』じゃなくて『美』ふたつだったのが印象に残って、なんだか俺がちらちら見ていた気もする。
それがあってか、向こうから話しかけてくれた。
色々話しているうちに仲良くなって、付き合おうかって話になって付き合い始めた。
手を繋いだりキスをしたりは無事通過できた。
でも、昨日の事。
俺の部屋でそういう雰囲気になって親もいなくて、そのまま初めてした。
万が一のためにゴムは持っていた…それは問題なかった。
でも俺も初めてだったのもあり、緊張で全然気遣いできなかったのが悪かったのではないかと思うんだけど、終わったと同時にフられた。
理由を聞きたくて今朝話しかけたら無視された。
このままじゃ俺は自信がなくて誰ともできない。
そこで俺の頭に浮かんだのが隣のクラスの吉岡樹。
ヤれれば誰でもいいという、とにかくそういった事に慣れた男。
こいつに教えてもらうしかないと思った。
そして今日…火曜日の放課後になり、吉岡のもとにやって来た。
というような事を話してメモとペンを出す。
吉岡に教えてもらった事をそのままメモするため。
「へえ…。で、そのメモはなに?」
「教えてもらった事、全部メモしとこうと思って」
「で? する時もメモ見ながらすんの? 俺が相手だったらその時点でさよならだわ」
「……でも覚えとかないと」
「カラダで覚えろよ」
「え…、…!?」
なんか吉岡にキスされた。
だけじゃなくて舌が入ってきて、舌を絡められてどう息をしたらいいかわかんなくて苦しいのに気持ちいい。
吉岡の唇が柔らかくてあったかい。
「な、んで…」
唇が離れて一言だけ出た言葉。
そんな俺に吉岡は笑う。
「辻居、すげえぽーっとした顔してる」
「だって…気持ちよくて…」
「じゃあちょうどいいから抱かれるやつの気持ちがわかるようにしてやるよ」
「え、なにがちょうどいいの?」
「俺もヤりたいから」
「え、え、え?」
するっとシャツをたくし上げられて胸の突起を口に含まれる。
くすぐったいのに変な感じがする。
「まって…なんで、ぁっ」
なんでこんな声出んの?
恥ずかし過ぎる。
きゅっと強めに歯を立てられたら腰から背筋に痺れるような感覚が走った。
「んっ…」
「可愛い声」
文句言いたいのに、なにを言ったらいいのかわからない。
気持ちいい。
「吉岡、男も抱いた事あんの…?」
ようやく出てきた言葉がそれだった。
ほんとはそれ以外にも色々あったはずなのにそれしか出てこない。
ていうか頭回んない。
「男は辻居が初めて」
そう優しく微笑まれて、どくんと心臓が高鳴る。
「…なんて」
「え、嘘なの?」
「辻居はどっちがいい?」
どっちって。
わかんない。
ていうか吉岡と話したの今日が初めてなのに、なんでこんなどきどきしてんの、俺。
美美といた時よりどきどきしてる。
カチャカチャと俺のベルトを外す吉岡。
「え」
「大丈夫」
「いや、大丈夫じゃない」
「怖くないから」
また優しく微笑まれて、なんだかわかんないけど。
「うん…」
吉岡が怖くないって言うなら怖くないんだって気持ちになった。
「可愛いな、辻居」
俺の答えに満足そうに笑んで、俺の履くスラックスと下着を脱がせる。
そっと足を開かされて、すごく恥ずかしいのに吉岡ならいい、って思った。
奥まった部分に指が挿れられ、異物感に顔を歪めると、吉岡は空いた手で髪や頬を撫でてくれる。
そしたらなんだか心がほわっとしてきた。
「あっ…やだ、それ」
「ここがイイんだ?」
「ん、…っうん、気持ちいい、かも」
ぞわぞわするような不思議な感覚のする場所に触れられ、俺は声が抑えられない。
吉岡の手つきが優しくて、それが余計に熱を高まらせる。
「辻居、もっと気持ちよくなって見せて」
「え…あ、ぅっ! あっ!」
ぐっとそこを少し強めに押されたらもっと恥ずかしい声が出てきた。
自分が自分じゃないみたい。
気持ちいい。
「あ、あ…!」
「…辻居、挿れていい?」
熱っぽい視線。
こんな目で見られたら嫌なんて言えない。
小さく頷くと。
「ほんとに可愛い、辻居」
そう言って頬を撫でてくれた。
吉岡に触られる場所、全部が気持ちいい。
指とは違う、もっと熱いものがぐっと挿入ってくる。
もっと痛いかと思ったら、意外と平気だった。
吉岡が丁寧にしてくれたからだと思ったらどきどきした。
「辻居、もうちょっと緩められる?」
「っ、あ…わか、な…っ」
俺の様子を見ながら、少しずつ、ゆっくり奥へと進む吉岡。
「っ、気持ちい…」
吉岡が気持ちよくなってる。
それだけで俺もぞくぞくする。
不思議だけど、俺が気持ちいい以上に吉岡が気持ちいい事が嬉しく感じた。
「動いてい?」
そっと髪を撫でながら聞いてくれる。
「ん、へいき…」
俺の答えを聞いて、満足そうな微笑みを浮かべて動く吉岡。
擦られる場所全部が気持ちよくて、おかしくなりそう。
「あっ! や、まって…っ」
「どした? 痛い?」
待ってって言ったらすぐ止まってくれた。
その優しさにも心臓がぎゅっとなる。
「痛くないけど、…おかしくなりそうだから」
「大丈夫、おかしくなっていいから」
「あっ!? あ、よしおか…っ、ひぁっ!」
腰を掴まれ、ぐっと奥まで吉岡が来る。
同時に昂ったものを扱かれた。
「イけそう?」
「あ、あ…イきそ…だめ…」
「俺もイきそうだから、一緒にイこっか」
吉岡の動きが速くなる。
頭の中が真っ白になって、もうなんか世界がめちゃくちゃになっちゃってもどうでもいいような、なにもかもがひっくり返るような感覚に大きく身体を震わせると、吉岡も小さく身体を震わせて達したようだった。
「辻居もイけたな…」
「あ…あ…、は…」
息が苦しい。
見ると吉岡の手が俺の白濁で汚れている。
「あ、ごめん…汚れちゃってる」
ポケットからハンドタオルを出そうとするとそれより早く吉岡は自分のスラックスのポケットからポケットティッシュを取り出して白濁を拭う。
「いいよ。で」
「?」
「どうだった? 抱かれる気持ち」
「……あ」
そうだった。
目的はそれだったのに、俺、気持ちよくて吉岡でいっぱいになってた。
顔が熱くなってくる。
「たぶん、俺が思うに」
「なに?」
「辻居は抱くより抱かれるほうが合ってるんじゃね?」
ちょっと意地悪な笑顔。
どきどきする。なんだこれ。
さっきから俺、おかしい。
「…俺、男だし」
「男だって抱かれるほうが合ってるやつだっているだろ」
「…そうかな」
「辻居がそうなんだし」
「……うん、そうかも」
なんとなく吉岡の言う通りかもって思った。
美美を抱いた時より気持ちよかったし、満足感がすごい。
「ま、いい相手見つければ?」
「え、待って」
立ち上がった吉岡のシャツの裾を掴んでしまう。
「なに、まさか俺がいいの?」
顔が熱い。
でも。
「……吉岡がいい、かも」
そう言うと、吉岡はまたちょっと意地悪に笑う。
「『かも』が取れて、ゴム持ってきたらまた抱いてやる」
シャツを掴む俺の手をそっと外させて背を向けてしまう吉岡。
ちょっと寂しい。
「いつなら空いてる?」
ちょっと大きめの声で吉岡の背中に声を掛ける。
と。
「じゃあ火曜日は辻居の日にしよっか?」
振り返って、また優しく微笑む。
その笑顔にぽーっと見入ってしまう。
頷くと吉岡はもう一度戻ってきて、俺の頭をくしゃっと撫でた。
「また来週」
今度こそ吉岡は資料室を出て行く。
俺、惚れっぽいのかな。
でもあんな優しくされたら好きになっちゃうだろ。
…だから吉岡は相手に困らないのか。
当初の目的からはかなり外れたけど、俺にとっては一番いい答えが出た気がする。
と思う。
END
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