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勘違いセフレ
高校生・幼馴染・同い年
ずっと好きだった幼なじみの桂に抱かれ続ける大翔のもやもやした話です。
*****
「あっ! かつら…っ、も、イく…」
「可愛い、大翔」
桂が俺を追い詰めるように動きを速める。
ぞくぞくする快感が駆け上ってきて、限界に身体が震える。
俺の腹に散る白濁を見て、桂は奥を求めてまた動く。
「あ…、まってかつら、あっ!」
「ごめん、待てない」
桂も限界が近いのか、動きが速まる。
気持ちよさそうに歪む表情に心臓がぎゅっとなる。
イッたばかりなのに、もう一度追い詰められていく。
「――っ!!」
「っ…」
俺がまた達するのを追いかけるように桂も果てる。
ぎゅっと抱き締められて唇が重なる。
俺はちょっと切なくなった。
◇
俺、藤田大翔と佐々木桂は幼なじみで、桂の家は隣。
同い年で小さい頃からずっと一緒だった。
高校に上がる時、成績のいい桂は自宅から片道二十分のH高校に決めた。
俺も一緒の高校に行くつもりでいたけど、俺の成績じゃH高校は到底無理で、自宅近くのA高校に進学した。
俺から離れたいのかなってちょっと思ったけど、学校違っても家が隣同士だからいつでも会えるなって言ってくれて、違うのかなとも思った。
俺はずっと桂が好きだった。
絶対叶わないだろうけど、桂に抱かれてみたいと思っていた。
忘れもしない六月二日。
俺の部屋でふたりで漫画を読んだりスマホをいじったり、ひとりでもできるだろって事をふたりでするのが好きでいつもそうやってふたりで過ごすんだけど、何の前触れもなく突然桂がキスしてきた。
頭の中真っ白になった。
でも嬉しくて、そのままの流れで桂に抱かれた。
そこからのほうが俺の心がついていかない。
桂が帰ったあと、なんで桂は俺を抱いたのか、俺を好きなのかと考える。
でもそんな事一言も言ってくれた事ない。
悶々としている俺の気持ちなど知らずに、翌週、また桂は俺を抱いた。
好きって言葉はやっぱり出てこない。
俺、もしかしてただのセフレ…?
なんてもやもやしていても、好きな男に、身体だけの関係でも抱かれるのが嬉しくて俺はなにも言い出せないまま月日が過ぎていく。
桂に抱かれる時のどきどきには全く慣れない。
いつでも心臓が爆発しそうになる。
でも、このままじゃいけないんじゃないかとも思う。
桂には抱かれたい。
けど、ただセフレ扱いされてるだけだったら虚し過ぎる。
だからと言って、もうこの関係が嫌だって言える強さもない。
どんな名前でもいいからこの関係を続けたい。
どうしたらいいいんだろう。
虚しさを見ないふりするべきか。
◇
毎日色々考え過ぎなのか単に自己管理ができていないだけなのか、熱が出た。
朝起きると頭がくらくらしたので熱を測ると三十七度八分あったので学校は休んで一日寝ていた。
「そうだ…桂」
桂に今日は来ないでって連絡しないと。
風邪うつしたらよくないし。
…ほんとは、熱のせいかちょっと心細いからそばにいて欲しいけどそんなわがまま言えないし。
だって俺はたぶん、セフレでしかないんだから。
桂が好きなだけなのに、うまくいかない。
◇
瞼を上げるとなぜか桂がいた。
「…なんでいるの?」
「お見舞い。りんご、家で切ってきたけど食べる?」
お皿にのったうさぎりんごを見せる桂。
嬉しい、けどその優しさが切ない。
「帰って。風邪うつるから」
「なんでそんな事言うの?」
「だって…」
「俺達付き合ってんだから甘えてよ」
………。
「は?」
「いつもそうやって大翔は距離置こうとするんだから。俺寂しいんだけど」
「…誰と誰が付き合ってんの?」
「? 俺と大翔が」
なにそれ。
初めて聞いたんだけど。
セフレじゃないの?
聞きたい事はたくさんある。
でも一番聞きたいのは。
「桂、俺が好きなの…?」
「え、言ったじゃん。そしたら大翔も俺の事好きって言ってたから…」
「え、え、え? いつ?」
「幼稚園の時。好きだって言ったら、俺のお嫁さんになるって言ってくれたじゃん」
すっごい真面目な顔で言われても。
「…それってさ」
「だってそれから俺を嫌いになったとか言ってこないし、いつもそばにいるから、そのままずっと好きでいてくれてんのかと思ったんだけど…違うの?」
「ちが…わないけど」
確かに今も桂が好きだけど、でも幼稚園の頃言ったって。
なにそれ。
「え? 大翔は付き合ってないと思ってたの? それなのに俺に抱かれてたの?」
「………」
「まさか俺、セフレ?」
桂がちょっと焦った顔をする。
「それは俺がずっと聞きたかった事なんだけど…」
「だって嫌いだって言われた事ないからずっと好きでいてくれてると思ってた」
わざわざ嫌いになったなんて報告しないだろ。
「いや、……ずっと桂が好き、だけど」
「じゃあ付き合ってんじゃん」
はっきり言い切る桂。
それでいいの?
いや、いいのかな。
でもなんか納得いかない。
「なにそれ。ちょっと、俺の切なさの消費どうしてくれんの」
「大翔、なにか切ない思いしたの?」
「……桂が好きだって言ってくれないから、俺達、身体だけの繋がりだって思ってた」
視界が滲んでくる。
俺の涙に慌てる桂。
「泣かないで…あ、そうだりんご食べて。フォーク忘れたから手づかみでもいい?」
「なんでりんご」
「だって大翔、おいしいもの食べると機嫌よくなるじゃん」
それはそうなんだけど。
でもなんかやっぱり納得いかない。
桂がうさぎりんごをひとつ抓んで、俺の口元に運ぶ。
「はい、あーん」
「………」
渋々食べると、甘酸っぱくておいしい。
桂の思惑通り涙が引っ込んだ。
「おいし?」
「……うん」
「よかった。も一個食べる?」
「…食べる」
桂がひとつひとつりんごを食べさせてくれる。
全部食べ終わったらやっぱり機嫌がちょっとよくなってしまった。
「桂、手がぺたぺた」
りんごの汁で桂の手がぺたぺたになっている。
なんとなくおいしそうでその指に舌を這わせる。
「っ、大翔…やめて」
「嫌ならやめる」
「……やじゃない、けど」
桂の指と指の間に舌を這わせると指先がぴくっと震える。
そのまま手のひらも舐めた。
りんごと桂の味。
「ねえ、大翔」
「ん?」
「今キスしたらりんごの味?」
「…たぶん。でも風邪うつるからだ」
だめ、と言い終わる前に桂の唇が触れた。
俺の口内を味わうように舌が絡まり、ちゅっと舌先を吸われて身体が熱くなる。
「ほんとにりんごの味」
「だめって…かつ、ぁっ」
ちゅ、ちゅ、とそのまま首筋にキスをされる。
ぞわぞわして桂の腕を掴むと、余裕のない瞳で桂が俺を見つめる。
「大翔が煽ったんだから責任取って」
「…好きって言ってくれたら責任取る」
「好き。大翔が好き」
ようやく聞けた。
いや、桂から言わせれば幼稚園の時にはすでに言ってくれてたらしいんだけど。
「しょうがないな……風邪うつったらお見舞い行くから」
「ん、来て」
深く唇を重ねて肌を暴き合う。
もう何度も桂に抱かれているのに、初めて抱かれているみたいな気持ちになった。
END
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