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「いい天気だね、標」
「そうだね」
昨日はあのまま景明の部屋に泊まり、ゆっくり起きて昼過ぎからふたりで外出。
服は景明のものを借りたけど、サイズがちょっと大きくて、それがなんだかどきどきする。
服から景明のにおいがするのも、ずっと抱き締められているみたい。
約束通り景明にシャツを選んでもらう。
一枚でいいって言ってるのに大量に買おうとする景明を止めて、話し合って最終的に五枚買ってもらった。
大切に着よう。
「いつから一緒に暮らす?」
「え?」
「新しい部屋探したほうがいいよね。来週の休み不動産屋さん行こうね」
「…うん」
「希望があったらどんな事でも言ってね。ネットでも色々見てみるよ」
「うん。お願い」
「間取りはワンルームがいいな。いつでも標の姿が見えてないと嫌だから」
景明と並んで歩くの、小さい頃からだから二十年以上続いてる。
カップルや家族連れとすれ違うのをなんとなく眺めていると、景明も俺の視線を追う。
「穏やかないい天気だし、お出かけ日和だね」
「うん。春だしね」
「暦の上では、ね。風はまだ冷たいから、標、風邪ひかないようにね」
俺の持つ荷物をさりげなく持ってくれる。
このさりげなさは天然だろうな。
俺が足を止めると景明も止まって俺を振り返る。
「景明が隣にいれば、俺のこの先の人生、ずっと春だよ」
「…………そういう事言うと、鎖で繋いで閉じ込めちゃうよ?」
「景明なら、いいよ」
景明の手をぎゅっと握って、ふたりで歩き出した。
END
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