好きが聞きたい

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好きが聞きたい

高校生・幼馴染・同い年・攻め視点 素直じゃない叶一の『好き』が聞きたい塁の話です。 ***** 「あっ、あ…(るい)っ」 「叶一(きょういち)、好き」 「んっ、…俺も、すき…」 なんてさ、言ってくれたらいいのに。 瞼を上げて、夢の中の叶一の『好き』に浸ってしまう。 いつも通りアラームよりちょっと早めに起きて、夢の内容を思い出す時間。 俺の夢に出てくるのは幼なじみの叶一ばかり。 おかしいくらいに叶一が好き。 中二の時に告白して、しばらく『気持ち悪い』って避けられて、それでもしつこくそばにいたらまた笑顔を見せてくれるようになって。 高校に上がる時に『付き合ってもいい』って返事をくれた。 もう無理かなって諦めかけてたからすごく嬉しかった。 でも、『付き合ってもいい』とは言ってくれたけど、『好き』とは言ってくれない。 それに夢ではもう何度も叶一を抱いたけれど、現実ではキスすらしていない。 付き合ってもうじき十一か月。 それなのに全然進展しない関係。 できたら叶一とキスをしたいし抱いてみたい。 だけど抱きたいって言ったって素直に頷いてくれないだろうし。 俺が抱かれるなら、いいって言ってくれるかな。 それにもとから、…なんて言うか、叶一はひねくれてるから、一筋縄ではいかない。 『好き』って言ったら『俺は嫌い』って当然のように返してくる。 それなのに手は繋いでくれたり、可愛いんだけど。 一度でいいから叶一の『好き』が聞きたいな。 ◇ 「叶一、好き」 「俺は嫌い」 やっぱり。 今日こそは言ってくれるかなって毎朝好きだって言ってるけど、今日も変わらず。 「いい加減、諦めれば?」 ちょっと冷めた目で見られても、それでも俺は諦めない。 だって俺達、付き合ってるんだし。 それってつまりほんとは叶一だって俺の事好きってことじゃん。 手を握ったら軽く握り返してくれるし、嫌がらないし。 「今日、塁の家行っていい?」 「うん、来て来て」 こうやって家に遊びに来てくれて、ふたりの時間作ってくれる。 それに俺は素直じゃない叶一も可愛くて好き。 学校に行くのも楽しい。 だって叶一と一緒に勉強して同じ高校に進んだんだから、楽しくないわけない。 そうやって一緒にいられるようにしてくれてるんだから、やっぱり叶一も俺が好きなはず。 …はず。 ◇ 「なんか飲む?」 「んーん、いらない」 俺の部屋でいつも通り漫画を読み始める叶一。 叶一が漫画読んでるから俺もなんか読むかなと思っていたら、叶一の様子がおかしい。 五分経ってもページをめくらない。 漫画読んでない? その割には漫画に目線をしっかり向けている。 そしてしばらくしたらじわじわと距離を縮めてきた。 何事だ。 そしてついに肩が触れるくらいの距離になり、俺は固まる。 俺の手に叶一の手が重なる。 心臓がばくばくし始める。 すぐ横にいる叶一の顔を見ようと思ったら、叶一の顔が近付いてきて。 「!」 鼻を抓まれた。 「なに期待してんだよ」 ぱっと手を離して叶一が笑う。 「……ひどい」 「塁、俺とキスしたい?」 「うん。してもいい?」 「だめ」 そう言って叶一がもう一度顔を寄せてきて、また鼻抓まれるかと思ったら唇が重なった。 「……」 「俺からするから」 キスしちゃった。 キスしてもらっちゃった。 嬉しい。 叶一を抱き締めたらボディソープの香りがする。 「あれ? 叶一、シャワー浴びてきた?」 「……」 「…もしかしてそういうつもりだったりする?」 なんて言ってみたけど、叶一が頷くわけない。 身体を離そうとしたら、叶一の腕が背中に回された。 「……うん、そういうつもり」 「……」 どうしたんだろう。 熱でもあるのか。 顔を覗き込んだらまた唇が触れた。 何度も唇が触れてぽーっとしていると叶一が俺の膝に跨って腰を擦り寄せてきた。 「え?」 「お願い」 「なにが?」 「察しろばか」 ちょっと頬を染める叶一。 すっごい可愛い。 「俺の事、好きだからしたい?」 「…好きじゃないけどしたい」 『嫌い』から『好きじゃない』に進展してる。 どきどきする。 「えっと、どっちしたい?」 「……」 叶一が俺の手を取って、自分の奥まった部分へと導く。 そこはすでにやわらかくなっていて、とろんとしている。 「え、なんで」 「……ずっと塁に抱かれるの想像して、自分でいじってた」 「そうなの?」 「うん…。早くしたいからさっき自分でほぐしてきた。時間かけて小母さん帰ってきちゃうとよくないし」 確かに、今俺の母親と叶一のお母さんはふたりで買い物に出かけているけれど、ゆっくりしていたら帰って来てしまう可能性もないとは言えない。 でも一度買い物行ったらすぐには帰って来ないから大丈夫だと思うんだけど。 それに俺がしたかったかも。 「次は俺にやらせて?」 「……うん」 叶一がめちゃくちゃ素直だ。 どうしたんだろう。 可愛過ぎる。 俺の昂りを叶一の蕾へ押し当てて滑り込ませるとびっくりするくらい気持ちよくてゾクゾクする。 夢では何度も抱いたけど、現実では初めて。 しかも夢で見たように叶一が素直でいつも以上に可愛い。 「んぅ、っあ…塁、すき…すごいすき」 「可愛い…」 俺の首に腕を回してキスをねだる叶一。 唇を重ねるとくぐもった喘ぎを呑み込んで吐息まで交わらせる。 叶一の喘ぎが切羽詰まったものになり、俺も一緒に追い詰められていく。 「あ、っ…あ、ぁあっ!」 びくんと叶一の身体が震えて昂りから白濁が吐き出される。 俺も同時に叶一に包まれて果てる。 叶一のくたりとした身体をぎゅうっと抱き締めると、やっぱり素直に俺の背に腕を回してくれた。 「叶一、どうしたの?」 「なにが…?」 「今日、すごい素直」 すごく気になった事を聞くと、叶一はちょっと恥ずかしそうにしてから、俺にひとつキをくれる。 「…ん、誕生日プレゼント」 「は?」 「誕生日おめでとう、塁」 「………」 そういえば今日、俺誕生日だっけ。 忘れてた。 叶一の誕生日は重要だけど、自分の誕生日ってすぐ忘れちゃって、気が付くと終わっているのがここ数年続いていた。 もう家族で祝うような年齢でもないし。 「付き合って初めての誕生日、俺をあげたかったから」 やっぱりちゃんと付き合ってるって思ってくれてる。 いつも素っ気ないけど、こうやって叶一が大事だと思う時には素直になってくれるなんて、夢みたい。 それに叶一が自分をあげたいって思うくらい、さっきも言ってくれたけど俺の事『すごい好き』なんだって実感したらびっくりするくらい嬉しくて鳥肌が立った。 「ありがとう、叶一」 「次は来年な」 「え、嘘。やだ」 ちゅ、ちゅ、と俺にキスを繰り返しながらちょっと意地悪な事を言う叶一。 毎日素直になってくれなくていいから、一週間に一回くらいは好きって言って欲しい。 そう言うと。 「素直な俺でも嫌いにならない?」 「ならない」 はっきり答えてもちょっと考えるような顔をする叶一。 「塁、ひねくれた俺が好きだって言ってたじゃん」 「うん。でも素直な叶一はもっと好き」 「じゃあ一か月に一回くらいは…言う、かも」 「うん。言って」 今度は俺からキスを何度もすると恥ずかしそうにしたあとに、頷く。 今日、いろんな叶一が見れて幸せ。 もう一度キスをしようとしたら顔を押しのけられた。 「もう終わり」 「なんで」 「心臓に悪い」 「どきどきする?」 こく、と頷く叶一の胸に手を置くと、確かにばくばく言ってる。 「叶一、もう自分でしないでね」 「?」 「抱かれたくなったら俺が抱くから」 「……考えとく」 あ、素直さが消えていく。 もうちょっと素直な叶一に浸りたかったけど、でも素直じゃないのも可愛い。 不思議。 これまで叶一も俺が好きなはず、と『はず』が付いていたのがなくなっただけで心にすっごい余裕ができちゃった。 「叶一、大好き」 「俺は嫌い」 あ、戻っちゃった。 でもそれでもいい。 一か月に一回は叶一の『好き』が聞けるようになったから。 でも、叶一が俺の誕生日を祝いたいって思ってくれた事が一番嬉しい。 すごい幸せな誕生日。 END
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