俺達の関係

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帰宅後、玄関で抱きすくめられた。いつもと違う紘一にどきどきしてしまう、簡単な俺の心臓。 「…ごめん、郁也」 「え?」 謝った? 紘一が? 「家出するほど恋人になりたいんだったら、恋人になろう」 「は?」 なに? 「だから、もう家出なんてするな」 「………」 なにそれ。 家出してほしくないから恋人になる? なにそれ。 それが紘一の答え? だから迎えにきた? なにそれ。 なにそれ。なにそれ。なにそれ。 プツンとなにかが切れた。 「そうじゃないだろ!!!」 紘一の身体を突き飛ばし、尻もちをついて驚いている紘一に言葉を投げつける。 「どう思ったんだよ、どう感じたんだよ! なにもかも言えよ!!」 「………」 ぽかんとしている紘一。俺は深呼吸をしてもう一度口を開く。 「俺は紘一が好き。好きだから恋人になりたい。紘一に、今更恋人になる必要性を感じないって言われて傷ついた。このままでいいじゃん、って言われて辛かった」 「………」 「それでも紘一が好き。でもそんな自分がばかみたいにも感じた。だから家出した」 「……うん」 ぽかんとしたままの紘一が相槌を打つ。俺は涙が堪えられない。 「迎えに来てくれて嬉しかった。やっぱり俺は紘一が好き。紘一が大切」 「…………好き…大切…」 紘一が自分の胸に手を当てる。 「……俺、郁也がいなくなって胸が苦しくて、すごく焦って、嫌などきどきがした。電話に出てくれなくて怖かった。なにかあったのかって不安になった。このまま帰ってこなかったらどうしようって思った」 「うん」 「顔を見たらすごくほっとした。抱き締めたらものすごく安心した」 「つまり?」 それは紘一にとってどういうことなのかと問う。 「……」 紘一が立ち上がって俺に手を伸ばす。俺の頬に触れ、輪郭をなぞる。 「………大切って、こういうことなんだ…」 初めて知ったことのように驚いた表情のまま俺に触れる紘一。 なんだよ、もう…。子どもじゃないんだから。 「…………しょうがないな…」 そんな言い方されたら、許すしかできないじゃん。 「ごめん、郁也…」 ちゃんとした“ごめん”に胸が熱くなる。 「いいよ。俺も勝手に出て行ってごめん」 紘一が俺の手をとり、ぎゅっと握る。少し不安そうな瞳で俺を見て、ゆっくり口を開く。 「……郁也、俺の恋人に…なってくれる?」 「うん…なる」 もう何度も抱かれた腕の中に閉じ込められるけれど、全然違う。嗅ぎ慣れたにおいも温もりも、全然違う。こんなにすべてを優しく感じたこと、なかった。 「おかえり…郁也」 「ただいま、紘一」
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