優しい恋に酔いながら

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優しい恋に酔いながら

大学生・同い年・幼馴染・美形×平凡 一途な攻め×浅はかでいたい受けです。 「誰でもいいから抱かれてみたい」 達哉の言葉に、藤亜は怒って――。 〔攻め〕藤亜(とうあ)20歳 〔受け〕達哉(たつや)20歳 ***** 「達哉(たつや)はもっと自分を大切にしろ!」  藤亜(とうあ)がこんなに怒るのは初めて見たかも、とぼんやり考える。「ぼんやり」は余裕なわけではなく、どう反応したらいいかわからないから。俺を見る瞳にははっきりと憤怒の色が燃えている。  昔から好きになるのは同性だった。あの男性が恰好いいとか、あの男子にどきどきするとか、そういう感情に疑問を持っていた。ある日考えてみて、一度も異性に惹かれたことがないからきっと自分は同性愛者なんだ、と自覚。好きな男子も男性も、彼女ができたり結婚したり……一人置いていかれているのをいつも感じていたけれど仕方ない。俺の恋が実ることはないんだといつも諦めの中にいるばかり。  そうして時が経って、俺は誰かと付き合った経験もなく、ただ自分の性欲を持て余していた。残念なことに俺は性欲が強いほうで、自分で処理してもまったく満たされない。十代の間はそれでもひたすら我慢して耐えた。でも今年二十歳になり、少し進んだ行動をしてみようと思い、誰でもいいから抱いてくれる人を探すことにした。恋人はもちろんいないし、もう誰かを好きになるつもりもないけれど、抱かれてはみたい。マッチングアプリで探してみてもなかなか出会えない。特に選り好みしているつもりはないのにうまくいかない。いっそゲイバーなどで直接出会いを探すか。 「ねえ藤亜、この辺にゲイバーってあったっけ?」  ちょうど部屋に遊びに来ていた幼馴染の藤亜に相談してみる。バイト先が繁華街に近い藤亜なら、いい店を知っているかもしれない。それに俺が同性しか好きになれないことも知っている。 「あるけど、行ってどうすんだ?」 「あるんだ。教えて? 行って抱いてくれる人探すから」 「……は?」 「誰でもいいから抱かれてみたい。誰としても同じだろうから」  でも、たまたま身体の相性がよくてそこから恋人に発展する可能性もゼロではない。我ながらいい考えの気がする、と心が浮き立った。でも藤亜の整った顔がみるみる歪んでいき、ひやりとする。 「なに考えてんだ!」 「なにって……」  なんで藤亜がそんなに怒るんだろう。そう思いながらも聞けないくらいの怒り具合だ。 「誰でもいい? ふざけんな! 達哉はもっと自分を大切にしろ!」
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