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震える
今日もだめだった。
勢いよく押し倒された瞬間、まるで嫌な思い出だけが繰り返される走馬灯のようにあの日の映像が流れた。そうなれば全身の筋肉が緊張して小刻みに震え始める。そして私の開けた胸元に顔を落としてくる男を、気づけば手で押し除けている。
男は室内の艶かしい灯りが映る白い大きなベッドに、抵抗する私を押さえつけて息を荒げた。よそ行きに整えられていた髪が乱れ、垂れ落ちる短い毛が男の頬をくすぐるのにも気を止めない。使い場のないそれを私の中に押し込みたくて仕方ないらしい。溜まりに溜まったものを吐き出そうと必死で、準備までしていた避妊具をつけることすら忘れている。
ああ、やっぱりそうだ。
どうせ自分のことしか考えていない。
あいつと同じ。
このまま易々とオモチャにされてたまるかと、私はその顔を正面から蹴った。枕をなげつけ逃げる私を捕まえようと伸びてきた腕が目の端に見える。それを上手くかわし、荷物を引っ掴んで私は部屋を飛び出した。待てよ!と叫ぶ男の声が廊下に響いた。
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