一緒に帰るぞ。

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 お付き合いをすると言っても、どうせ一時的なことだと思う。  住む世界が違うんだもの。  私みたいな一般人とヤンキーのこの人が一緒にいられる世界線なんてどこにもない。  そのうちにきっと自然消滅する。  それを願うしかない。  校門を出てしばらくして、辺りに人がいなくなった。  すると、それまで無言だった赤い髪がやっと口を開いた。 「ゆ……夢乃」  ゆめの?  あっ、私の名前か。夢の話でもするのかと思った。  男子から下の名前で呼ばれる経験は今までなかったからドキッとしてしまう。 「は、はい」 「夢乃って……呼んでいいか」  目を合わせず、彼が言う。  確認するんだ。そして許可取っちゃう? ヤンキーなのに?  やだな、ちょっと可愛いと思っちゃう自分がいる。 「はい……佐治先輩」 「俺のことは、竜也でいい」 「タツヤ……」  私が呟くと、彼はみるみる赤くなっていった。  そんなに照れられると、私の方も頬が熱くなってきちゃう! 「あの、呼び捨てはさすがに失礼なので……竜也さんとかじゃダメですか?」 「舎弟かよ」    佐治先輩はどこか不満げだ。きっと子分たちにそう呼ばれ慣れているんだろう。  恋人らしい特別感が欲しいのかな。その気持ちはちょっと分かる。  くん呼びにしたってそんなに変わらないし、ここは思い切った変革が必要か。 「じゃあ……たっくんとか」 「あ”あっ⁉︎」 「ひえええっ、じょ、冗談ですっ、冗談でえす! ごめんなさい!」  間髪入れずに全力鬼睨みしてきた赤髪ヤンキーにビビり、私は両手を合わせて謝った。  屈辱に耐えているのか、彼の頬の筋肉がピクピク動いてる。  たっくんはさすがにフランクすぎたよね。  どうしよう。今度こそ本当に怒らせちゃったかも⁉︎  ハラハラしていると、彼はさっきより一層赤くなってプイと横を向いた。 「お前がそう呼びたいなら……好きにしろ」  コメツブみたいなちっちゃい声で、彼が言う。 「えっ。いいんですか……?」 「好きにしろって言ってんだろ」  いいんだ。  あー、びっくりした……。  これじゃ心臓がいくつあっても足りないよ。早く家に帰りたい。
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