これが本当の修羅場です

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これが本当の修羅場です

「実は僕も恋には不器用なんだって言ったら、信じる?」  ……と木更先輩が言ったその直後。  私はリアクションに困っていた。  もしかして私……木更先輩にアプローチされてる?  いや、意味分かんないんだけど。  私は先輩を睨んでいた不躾な後輩ですよ?  生意気だと思われて嫌われるなら分かるんだけど、どうしてこうなった?    もしかして先輩は、珍しい生き物──つまり珍獣を可愛がるタイプの王子だったとか?    私はチラッと妄想する。  夕食会の余興にジャグリングを披露する旅芸人を冷たい眼差しで見ている王子。 「こんなものは見飽きたぞ。もっと珍しいものを持ってこい」 「ははっ! それでは……このミニブタなどいかがでしょう」  短い手足にピンクのまんまるフォルムになった私が檻の中で暴れていると、王子の瞳がキラキラと輝き出す。 「おお……なんとめんこい生き物だ。気に入ったぞ」 「ブヒー!(たっくんの家に帰らせてよーっ!)」 「睨みつけてきてるな。反抗的でますます珍しい。よし、僕のペットにしよう」    ……的な?  ごめんなさい。気まぐれ王子の道楽に付き合う暇はございません。  私もだいぶたっくんの沼にハマってるな。 「それじゃ、私は急いでいるので」  一応ぺこっと頭を下げて、アパートに戻ろうとした時だった。  先輩の手が私の腕を掴んだ。 「待って」 「ちょっと……何するんですかっ、放してください!」  振り返って睨んだけれど、先輩の目は私を見ていなかった。先輩の視線を辿って、自分が行きかけた方向をもう一度見てみると、そこにはいつの間にか現れた三人のヤンキーたちがニヤニヤしながら歩道に立ち塞がっていた。 「そうだそうだ、放せよ」 「無理強いすんなよ、木更センパイ」  どうやら向こうは木更先輩のことを知っているようだった。ということは、彼らもうちの高校の生徒なんだろうか。 「君たちは喫煙の罰で自宅謹慎中だろう。何故こんなところにいる?」 「その節は世話になったな、生徒会長さんよ」  ヤンキーたちとバッチバチに睨み合う先輩……。  これは……修羅場の匂いがします!!
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