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巻き込まれる前に撤退したいのに、先輩は私の腕を放してくれなかった。
「今行ったら危険だよ」
「何でですかっ? 私、関係ないのに……っ」
「あいつらはそんな話、耳を貸さないよ」
木更先輩の言う通り、彼らの興味の視線は私に向けられているようだった。
「今日も会長は可愛い女子と一緒で羨ましいなあ」
「俺らにも少しモテを分けてくれよ」
ゾワゾワと鳥肌が立つような目で見られて、私は思わず先輩の背後に身を隠した。
本物のヤンキーはやっぱり怖い!
「大丈夫だよ、夢乃ちゃん。君のことは僕が絶対に守ってあげるから」
先輩の背中から神々しい光が見えた。
さっきは睨んじゃってごめんなさい。どうにかして助けてください、神様仏様キラキラ白王子様!
震えながら祈っていると、不良たちが先輩の眼前に迫った。
「女の前だからってカッコつけやがって。てめえのことは一度ぶん殴りてえと思ってたんだ。ツラ貸せよ」
不良が先輩の肩を掴む。
「こんな大通りで絡むなんて君たちは本当に愚かだな。誰かに通報されたらどうするんだ」
「それもそうだな。じゃあ俺らの遊び場に来てもらおうか」
先輩を囲んだ不良たちが、駅の西口の方へ先輩を連れて行こうとする。
ど、どうしよう!
「そうだ、通報──」
スマホを取り出そうとした時、不良の一人が振り返って私の腕を掴んだ。
「きゃあっ!」
「バカ女が、余計なことすんじゃねえよ! てめーも来い!」
通報しようとした罰なのか、それとも最初からそのつもりだったのか、不良たちはニヤニヤしながら私を捕まえた。
「待て、彼女には手を出すな!」
先輩がカッコよく振り返る。けれども、私を捕まえた不良はニヤリと笑ってそれを一蹴した。
「この女は人質だ。てめえがおとなしく俺らについてくるなら何もしねえよ」
いや、思いっきり嘘でしょ。
だってこの人、めちゃくちゃ悪者顔だもん!
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