195人が本棚に入れています
本棚に追加
こうなったら私もたっくんに加勢するしかない。
潰れたマイバッグでも勢いよく振り回せば少しは痛いはず。
「邪魔だよ、夢乃ちゃん。余計なことしないで」
実行しようとした私のところに木更先輩がやってきて、すかさず私を捕まえた。
「放してくださいっ」
私が抵抗しているその間にも、たっくんは三人から交代で殴る蹴るの暴行を加えられていた。立っているのがやっとなのか、ほとんど無抵抗の状態に近いようだった。
「なんだ、これがあの佐治竜也かよ。クソ強えっていうのはただの噂だったんだな」
何も知らないヤンキーたちが笑いながらたっくんを殴っている。それが悔しくて、私はポロポロと涙をこぼした。
「やめてえ! たっくんに酷いことしないでよーっ!」
「夢乃……」
たっくんがふらつきながら私を見た。
「……泣くな。お前の逃げ道は、俺が絶対に……なんとかするから」
──泣かないで。僕がなんとかしてあげる。
その時、不意に子供時代の記憶が蘇った。
夕方の公園でブランコを漕ぎながら、同級生の男の子にいじめられて泣いていた幼い私に優しくしてくれた男の子のセリフと……たっくんのセリフが偶然重なって。
偶然?
私はハッとしてたっくんを見つめた。
たっくんの澄んだ眼差しが一瞬幼く見えて、私の恋した人の面影と重なる。
うそ。
まさか……あの時の男の子って……?
最初のコメントを投稿しよう!