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あのあと。
空腹すぎて動けなくなっていたたっくんに今すぐ何か食べさせたかった私は、思い切ってお母さんに連絡した。
私の作ろうとしていた鍋の具は先輩にぐちゃぐちゃにされてしまったし、また全部買い物して作って……となると時間がかかる。
買い物をしてたら不良に絡まれた。危ういところを助けてくれた恩人を家に連れ帰ってご馳走したい。
お母さんに電話でそう説明したら、すぐに来なさいと快く返事をくれた。そこで私たちは可児くんが拾ってくれたタクシーに乗って、家に帰ってきたというわけだ。
ちなみに、のびてしまった先輩の始末はあの三人のヤンキーたちが請け負ってくれることになった。
「俺らどうせ停学中だし、俺らがやったことにしてやるよ」
「本当ですかっ?」
「ああ。こいつが佐治にやられたって言いふらさねえように、しっかり脅しつけとく。こいつの後ろ暗い秘密だったら俺らたくさん知ってるから」
「助かります。ありがとうございますっ!」
彼らは少しモジモジした後、たっくんに「佐治……さん」と声をかけた。
「さっきは殴ってすみませんでした」
「気持ち悪いからやめろ。俺はそんなこと気にしてねえ」
素直じゃないたっくんはプイと横を向いて、彼らの謝罪を受け入れた。
それでヤンキーさんたちはますますたっくんに惚れ込んだみたいで、チワワみたいにホワホワした目になった。
「俺らも竜也さんって呼んでいいっすか……」
「舎弟になりたいです……」
「うるせえ。これ以上めんどくせえ舎弟はいらねーんだよ」
「そうだそうだ! 竜也さんには俺だけいればいいっすよね!」
「てめーもいらねえよ、朔」
「がーん!!」
なんだか、男の友情が増えたみたいで良かったです。
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