本物の王子様

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「佐治くん、うちの夢乃を助けてくれて本当にありがとうね」    恩人として家に招かれ、私の両親から感謝されているという状況に、たっくんはずっと居心地が悪そうな顔をしていた。 「いえ、別に……」  真っ赤になっているのは鍋が辛いせいだけじゃないよね、きっと。 「今週は鍋をたくさんやるつもりだったから、食材もたくさんストックしてあったの。どんどん遠慮なく食べてね」  そう言い残すと、お母さんはキッチンで洗い物をし始め、お父さんは「ごゆっくり」と笑って寝室に入っていった。 「いやー、マジうまいっすね、竜也さん!」  可児くんが無邪気に肉を頬張る。 「何でてめーまでいるんだよ」 「いいじゃないっすか。俺も腹減ってたんスよ」  私はつい失礼なほどじっと可児くんを見つめてしまった。 「何だよ、乙原」 「あ、ううん。何でも……。可児くん、随分変わったね?」  そう。  私が今日、一番びっくりしていたのは、可児くんの存在だった。  子供の頃、可児くんは巨漢というかジャイアンみたいな体型をしていた。そして、毎日私を「チビ」だの「ブス」だの言って泣かせてくれていたのだ。  中学校の頃は柔道部に入っていて、髪型は坊主だった。巨漢という印象は中学時代にはなくなって普通の体型になっていたけど、怖そうなイメージは残っていてあまり近づかないようにしていた。  それが……半年以上経ってみたら、金髪だもの。  イメージの塗り替えが追いつかないよ! 「まあ、俺も竜也さんに出会って心を入れ替えたっつーか。竜也さんみてえなカッコよくて強え男になりたくて、必死でダイエットして髪も伸ばしたっつーか? 乙原もJKになって急に可愛くなったんじゃねえの? 最初竜也さんちの前で見かけた時、お前って分かんなかったもん」  そうそう。可児くんたちがアパートの前でたむろしてた時、『お前どっかで見たことあんな?』って言われたことがあった。  あの時にすぐ思い出せなかったのは、可児くんの見た目が変化しすぎていたせいだ。  
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