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可児くんは照れたようにくしゃっと笑った。
「ガキの頃は本当にごめんな」
「う、ううん」
「実はあの頃、乙原のことが気になっててさ……それでついついちょっかいを」
その瞬間、たっくんからドス黒いオーラが溢れ出た。
「あ”あッ⁉︎」
「す、すんませんすんません! ガキの頃の話なんで許してください、竜也さんっ!」
「おう……」
お箸が折れそうなほど握りしめているけど、たっくんは何とか堪えてくれた。
「そういえば乙原で思い出したことがあるんだけど、昔、俺たちがかくれんぼの途中でお前を公園に置き去りにして帰っちゃった日があったろ?」
「うん!」
あの日のことだ!
私が初恋の人に出会った日。思わず前のめりになる。
「あれから私のこといじめなくなったよね。どうして?」
「それがさ、あのあと……」
「お”いっ」
たっくんがまた怖い目でギロリと可児くんを睨んだ。
「ベラベラと余計なことしゃべってんじゃねえよ。せっかくの鍋が冷めんだろ」
「竜也さん、猫舌じゃないっすか。少し冷めた方が食べやすいんじゃ……」
「うるせえよ。それにさっきからてめー夢乃のことお前呼ばわりしてっけど、誰の許可を得てそう呼んでんだ? 馴れ馴れしいんだよ」
「さーせん! これからは乙原さんと呼ばせていただきますっ!」
「たっくん!」
私は我慢できなくなってたっくんを睨んだ。
「何で可児くんの邪魔するんですか? 何か私に聞かれたくないことでも隠してるんですか?」
私が出会った本当の王子様……あなたなんじゃないの、たっくん⁉︎
私がじっと見つめていると、たっくんは首まで真っ赤になって目を逸らした。
これは絶対に怪しい。
「可児くん、続き話して」
「おう」
可児くんは昔を懐かしむように目を細めた。
そしてついに彼はあの日の真相を語り始めた。
「乙原さんをからかったあと、俺はダチとコンビニでアイスを買って店の前でたむろしてたんだ。そこにやってきたのが──」
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