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◇
「公園にいる女子を泣かせたのはお前らか」
友達と一緒にアイスを食べていた朔太郎は、「あ?」とうるさそうに振り向いた。
そこには小綺麗な服を着た見かけないイケメン小学生がいた。髪はサラサラの黒髪で、目は切れ長の奥二重。まだ朔太郎たちより一学年か二学年くらいしか年は離れていないと思われるが、すでに凛とした男らしさを感じる。
「だったらどうだって言うんだよっ」
当時の朔太郎は大きな体躯にものを言わせ、猿山のボスのような態度を気取っていた。自分より小さいと感じた相手には絶対に勝てると踏んで、強気な態度を取った。
特にイケメンは気に入らない。
なんか分かんないけど、ムカつく。
懲らしめてやる。
単純な脳みそで、朔太郎はそのイケメン男子にメンチを切った。
「お前ら、毎日あの子をいじめて泣かせてるそうだな。何でそんなことをする?」
「てめーには関係ねえだろ、ああ? やってやろうか、ああ?」
朔太郎は当時流行していた不良ドラマの影響もかなり受けていた。殴り合いの喧嘩なんか一度もしたことがなかったが、そろそろそういう悪いこともやってみたい。それなら、こういう顔見知りでもない弱そうな相手がちょうどいいと思った。
しかし、そのイケメン男子は軟弱そうな見た目と違い、実は芯の通った強いハートの持ち主だった。
「集団でイジメなんてカッコ悪い真似してんじゃねえよ。すぐにあの子に謝りに行け」
朔太郎とその仲間たちに向かって、彼は堂々と意見した。朔太郎は一瞬面食らって、すぐに羞恥心で赤くなった。
「うるせえっ! 無関係なやつに言われたくねーんだよ、ばーか!」
イケメン男子はカチンときたようだった。
「じゃあ俺があの子と無関係じゃないなら口出ししてもいいんだな?」
「は?」
頭の回転がちょっと鈍い朔太郎には、このイケメン男子が何を言っているのかよく分からなかった。すると彼はキリッとした顔をしてこう言い放った。
「だったら今日からあいつは俺の女だ。あいつを泣かせる奴は俺が許さない」
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