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朔太郎は頭をバットで殴られたような衝撃を受けた。
「お、お、お前の女っ⁉︎ 何だそれ、どういう意味だよっ! っていうか誰だよお前! 本当は乙原夢乃とどういう関係なんだよっ!」
「乙原夢乃……」
イケメン男子がその名前をしっかりと噛んで飲み込むような顔をした時だった。
「小学生のガキが、こんなところで女の話なんかしてやがるぞ」
朔太郎よりも体のでかい中学生男子が笑いながら現れた。数も五人と、朔太郎たちよりも多かった。
「生意気なガキだな。あいつを泣かせる奴は許さないって? よくもそんなくっせえセリフ吐けるなあ」
五人はゲラゲラ笑った。
朔太郎はこの隙に逃げようと思った。この五人は本物の不良に違いない。絡まれたら怪我をするかもしれない。ごっこ遊びとはわけが違う。
ところが、後退りする朔太郎たちとは反対に、イケメン男子は彼らに向かって堂々と「あ”あっ⁉︎」とメンチを切った。
「バカ、やめとけ、殺されるぞっ」
朔太郎は一応止めた。しかし、もう遅かった。イケメン男子はすでに中学生に囲まれてしまっていた。
身長差は20センチもあったかもしれない。
それでもイケメン男子は全く怯んだ様子もなかった。
「女を泣かせるような奴は最低だって言ってんだ。それの何が悪い」
このイケメン男子には自分が私生児であるという複雑な生い立ちがあり、弱者は救われるべきだという信仰めいた信念があった。しかしそのことを朔太郎が知るのはもっと後になってのことである。今はただ、強い者にただ刃向かっているバカにしか見えなかった。
当然、相手の中学生もますます不快さを露わにしてイケメン男子を睨んでいた。
そのうちに、中学生の一人が言った。
「こいつ、生意気だからシメてやっか。公園にいる女連れてきて、そいつの前で泣かせてやろうぜ」
「いいなそれ。俺が行ってくる」
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