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◇
「これが俺と竜也さんの運命の出会いだったっていうわけっす」
可児くんは嬉しそうにそう言って頷いた。
たっくんは可児くんが話をしている間、ふうふうとスープを冷ましながら夢中でお鍋を食べて、聞いていないフリをしていた。
「うま……」
真っ赤になっちゃって。聞いていたのはバレバレですよ、たっくん。
「そっかあ。私って、あの頃からもうたっくんの女だったんですね」
「……!」
私の言葉に、たっくんは胸をトントン叩いて苦しそうな顔をした。
「それは……俺の勝手な戯言だ。それにあんな昔のこと……お前はどうせ何も覚えちゃいないんだろ。俺の初恋相手が誰なのか全然気づいてなかったし」
なるほど。私が覚えていないと思っていたから、たっくんは名乗り出るのが恥ずかしくて正体を隠そうとしていたわけだ。
全てが繋がってスッキリした。
だけど──たっくんは分かっていない。
私がどんなにあなたに会いたいと願っていたことか。
「たっくん、大好き」
「バカ。お前の親に聞こえるぞ……」
「えへへ。だって、嬉しいんだもん」
いろいろ勘違いして遠回りしていたけど、ようやく本物の王子様に出会えたみたい。
今度二人きりになった時、もう一度私の方から告白しよう。
ずっとずっと、私もあなたが好きだったよ、たっくん。って。
私の熱い想いを感じたのか、たっくんが私を見つめて恥ずかしそうにそっと微笑んだ。
ズキュズキュズキューーン!
たっくんの笑顔、初めて見た! めちゃめちゃ可愛いんですけど!
「たっくん〜♡」
「やめろ、それ以上近づくな……心臓が破裂する」
照れ屋な魔王様は真っ赤な顔でそう言って、私の接近を拒む。
お鍋の中の野菜たちがそんな私たちをからかうようにグツグツと体を揺らして笑っていた。
了
ご愛読ありがとうございました!
あとがきとちょっとしたお知らせをスター特典に載せましたので、もしも良かったらたった1ページですので見にきていただけたらと思います。
よろしくお願いします_( _´ω`)_ペショ
https://estar.jp/extra_novels/26224731
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