一緒に帰るぞ。

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 ああ……たすけて。おしっこチビっちゃう。 「てめー、なんで俺から逃げた。あ”あ”?」 「ごめんなさい……逃げるつもりなんて、なかったんです……」  走り始めた満員電車の中で、何故かぽっかり空いたスペースにレッドヘアーデビルこと佐治竜也から至近距離で睨まれる私。  おかしいな。もう人が乗れるはずなかったくらい混んでたのに、どうして?  乗車率120パーセントだったのに、私の周りだけ80パーセントになってるの、何でだろう⁉︎ 「やっぱりお前、俺のこと好きじゃなかったんだろ」  この世の終わりかと思うくらいの恐ろしい顔が近づく。 「そ、そんなことありませんっ」 「じゃあ何で」 「好き……! だから──」  私は咄嗟にそう叫んでいた。 「たっくんのことが好きすぎて、好きすぎて……二人きりだと緊張しちゃって……どうしたらいいか分からなくて、つい逃げ出しちゃったんです……!」    私の魂の叫びを聞いて、たっくんの瞳が驚きの色に変わった。   「たっくんが、ほんとに死ぬほど大好きなんですぅ……! お願いだから、信じてくださぁい……っ」 「くっ……」  すると突然、たっくんは私の背後にあった電車の窓を思い切り殴った。  ガン! とすごい音がして電車が揺れた。  今の、ひび割れてません⁉︎ 大丈夫かこの電車。ごめん、耐えて!  周りはみんな恐怖に怯え、座席に座っている人まで最大に押し詰まった状態になった。  人々を恐怖のどん底に叩き落とした本人は、窓を殴った拳を震わせ、苦悶に満ちた表情で呟く。 「くそったれが……可愛いこと言いやがって……」  き……効いた──!!  私の泣きの一言が、どうやら魔王にクリティカルヒットした模様です!  ホッとした瞬間、電車が大きく揺れた。 「キャッ」  バランスを崩した私を支えるように、体の両側に腕が突き立てられた。 「大丈夫か、夢乃」  私を挟んで壁に腕立て伏せをするような姿勢のたっくんと至近距離で目が合った。    顔が近い……。  ええええ、待って! この体勢、ドキドキするー!!!  
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