それは痛恨のミスでした。

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 子供の時から、残念な人生でした。  父親が転勤の多い保険会社に勤めていたせいで引越しが多く、新しい環境にすぐに馴染めなかったり、友達ができても別れなければいけなかったりした。  物覚えが悪くてスポーツも苦手で、明るいだけが取り柄だった。  男子にいじめられたこともあったな。私がすぐに泣くからからかうと面白いと思われたようで、押されたり転ばされたりして膝にはいつも絆創膏がついていた。  そんなある日、彼主導のかくれんぼに誘われた。  誰もやりたがらない鬼に指名され、私が目を閉じて10数えている隙にみんなが隠れ始めた。  でも本当は誰も隠れていなくて。私が目を閉じたら全員家に帰ってしまっていたらしい。  私は夕陽が目に刺さって痛くなるまでみんなを探し続けた。見つかるわけがなかったのにね。  探し疲れた私は、一人、ブランコに乗って泣いていた。  するとそこに年上の男の子がやってきた。  どうしたの? いじめられたの?  優しく尋ねられて、私は寂しさを爆発させてしまった。名前も知らないあの子に不満をぶちまけ、もうこんな辛い思いをするのはイヤだと言った。  泣かないで。僕がなんとかしてあげる。  男の子はそんなことを言ってくれたような気がする。  そして、なぜかその翌日から本当に私に意地悪する子はいなくなった。みんな人が変わったみたいに優しくなって。  でも、せっかく居心地が良くなったその学校からも転校することになってしまい──あの男の子にはそれから一度も会えなくなってしまった。    私の人生って、いつもこんな感じ。  上向きになると必ず失敗する。  フワフワ飛んでいたら上からバチンとハエ叩きで叩き落とされるみたいに、必ずオチに悲しいことが待っているんだ。  
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