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「水臭いじゃねえっすか、竜也さん。俺には本当のこと言ってくださいよ。ガキの頃からの仲じゃねえっすか」
舎弟さんが興奮気味にたっくんに迫る。
たっくんの表情が気になるなあ。鍵穴から向こうを覗けないか試してみるけど、何も見えない。
「ちげえよ。てめえの勘違いだ」
「隠さなくてもいいじゃないっすか。竜也さんくらい男らしくてかっこいい人だったら、女が放っておくわけないっすからね! もう向こうは竜也さんにメロメロなんじゃねえすか? 竜也さんに抱かれたくてたまんねーってなってんじゃねえすか?」
男らしさというか、可愛らしさにはメロメロです。そこ以外は間違ってない。
舎弟さんはよほどたっくんのことが好きらしい。たっくん本人よりウキウキした口調で続ける。
「でも竜也さんクールすぎっすから女を泣かせてんじゃねえかなって、ちょっと心配っす。ダメっすよ、少しは優しくしてやんねーと。まあそれでも竜也さんが振られるってことは万に一つもねえと思いますけど」
「ちげえって言ってんだろ」
すると、舎弟さんは楽しそうに笑いながら言った。
「そろそろ白状してくださいよ。もしかして相手は……あの時の女じゃねえっすか?」
私はドキッとした。
あの時の女……って、誰?
舎弟さんは誰のことを言ってるんだろう。
たっくんの彼女に心当たりがありそう……。
私の知らない女の子がたっくんの周りにいるってこと……?
「誰のことだ」
「とぼけないでください。あの女といえば、竜也さんの初恋の女に決まってるじゃないっすか」
たっくんの初恋……⁉︎
何それ、超気になるやつ!!
私はもう居てもたってもいられなくなってきた。
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