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「えーと、白菜とにんじんはマスト。それから豚肉とネギとお豆腐と、あとはしいたけかな」
しいたけとか、きのこ類。私は子供の頃、ちょっと苦手だったことを思い出す。
たっくんは好きかな?
しいたけを眺めながら思わず妄想。
十文字に飾り包丁を入れたお汁の染みたしいたけを箸で摘んで、たっくんの口元に運ぶ私。
「たっくん、あーん♡」
「やめろ」
私のあーんを嫌がるたっくん。どうしたのかな?
真っ赤な顔で私から目を逸す。
「キノコは……食わねえ主義だ」
「食わず嫌いは良くないですよ。早く食べてください♡」
「うるせえ、食えねえもんは食えねえって言ってんだよ!」
ゴネる姿が可愛すぎます。
「絶対美味しいから食べてくださいっ」
「……分かったよ。お前がそんなに言うなら……」
私のお願いで仕方なく折れてくれるたっくん。潤んだお目目で私を睨み、反撃するように一言。
「その代わり、これを食ったら次はお前を食わせろ」
なーんて。きゃああ〜♡ そんなこと言われたら死んじゃう!
絶対言われないのは分かっているけど!!
野菜コーナーでヘラヘラしていたら買い物客に変な目で見られていたことに気づいた。
いけないいけない、こんな妄想している場合じゃない。
早くたっくんの待つアパートに帰ってこの妄想を現実のものにしないと。
私はスピーディーにお買い物を済ませ、いそいそと足早にスーパーを出た。
その時だった。
「夢乃ちゃん?」
出会い頭に声をかけられて、私はびっくりして立ち止まった。ふと振り向くと、秋らしい色使いのロングカーディガンを素敵に着こなした木更先輩がいた。先輩らしい大人っぽい私服にドキッとする。
「き、木更先輩……」
「やあ」
先輩はニコッと笑いながら私に近づいてきた。
一昨日、私が喧嘩腰に睨んでしまったことなんて全く気にしていないかのように自然な態度だった。
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