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「例の事件?」
竜也は一瞬、何のことだろうと思い、首を捻った。
『竜也さんが犯人扱いされた暴行事件の話っすよ! 疑われてる本人なのに忘れないでくださいよ!』
「ああ、あれか。どうでも良すぎてすっかり忘れてた。お前、まだ調べてたのか」
『当然っす!』
朔太郎は竜也の汚名を返上しようと、土日もずっと情報を集めていたらしい。手柄を聞いて欲しそうな声がするので、竜也は仕方なく話を促した。
「それで、誰だったんだ。結論を言え。五秒以内に」
『なんか暗そーなフツーの奴っす。ビデオ通話に切り替えますね』
別にそこまで求めてないと思いながら承諾すると、インカメでやや煽りの角度の朔太郎が写った。すぐにそのカメラが動き、朔太郎の隣にいた男のアップになる。
『コイツっす!』
オドオドした目と竜也の目が合った。特徴は薄いが、どこかで見覚えのある顔だと思った瞬間、竜也は思い出した。
「お前──下駄箱で会ったな」
『佐治くん……!』
知り合いっすか? と朔太郎。
その男は夢乃のラブレターを竜也の下駄箱に入れたアンチ木更の男だった。
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