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「てめえが暴行犯だったのか」
『そうっす。被害者のナツキっていう女の家、突き止めたんで、話聞こうかなと思って来たら、コイツが家の前をウロウロしてたんすよ。そんで、捕まえて何やってんだ? って聞いたら──』
「うるせえよ朔。こいつにしゃべらせろ」
その方が脚色なしで話が短く済む。
「お前がやったのか」
『……』
『言えよ! さっきの話!』
朔太郎が男の胸ぐらを掴んで脅す。男は苦しそうに顔を歪めた。
『……僕はナツキのことが好きだったんだ。だけど、ナツキは木更に夢中で……僕の言うことを全然聞いてくれなくて』
『だから無理やり自分のものにしようとしたんだな? このクソ野郎がっ』
『違う、クソ野郎なのは木更だ! あいつ、ナツキを騙してたんだ! ナツキは木更からもらった第二ボタンをずっと大事にしていて、木更もナツキのことが好きだと信じていたのに、あいつは──』
「待て、第二ボタンって?」
何かが頭に引っかかる感じがして、竜也は思わず口を挟んだ。
『第二ボタンといえば、卒業式の日に女子が野郎からもらうやつじゃないっすか? 俺のとこには誰ももらいに来てくれなかったっすけどね』
「お前の話はいいんだよ、朔。茶々を入れんな」
しかし「卒業」「もらう」といったワードで、何に引っかかっていたのかが分かった気がした。
その話は聞いたことがあるのだ。
しかも、木更本人の口から──。
『僕はナツキを救いたかったんだ。木更の魔の手から』
「詳しく話せ」
竜也の声に、観念したような顔をして男は頷いた。
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