お礼

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お礼

 怪奇を取り扱う探偵、怨神勇人の元に、「私、知らない女性につけらているんです」と言う依頼が舞い込んで来た。  依頼者は折笠愛子と言う女性だ。  勇人は、怪奇を取り扱う探偵だが、あくまで怪奇をメインにしているだけであって、こう言う一般の依頼も請けるようにしていた。こう言う依頼も貴重な収入になるからだ。  愛子の話によると、つけられはじめたのは、1ヶ月ほど前から。  毎日のように最寄り駅からつけて、家に到着すると姿を消すと言う。 「では、本日から始めさせて頂きます。よろしいでしょうか?」 「はい。お願いします」  勇人は、愛子の帰路から早速、最寄り駅から自宅までの間、怪しい人物の写真を愛子を尾行しながらスマホで撮った。  翌日、怪しい人物として撮った女性の写真を愛子に見せた。すると、直ぐに後をつけていた女性が判明する。 「この女です!」 「この方ですね。分かりました。また、現れたら、話を訊いてみます」  次の日も、女は現れた。勇人は、女に気取られないように、慎重に背後に近づく。  女は、勇人が近づいていることに気づいていない。  勇人は間合いに入ると、すぐさま女の手首掴み、空いている手で、女の口を塞いだ。するとどうだろう。「ボッシュ」と女の体から煙が上がり、女が猫の姿になった。  女が、猫の姿になった。  勇人は驚いた。だが、それだけだった。  何かしら怪奇かもしれないと考えていたところもあったからだ。  勇人は、猫の前足を掴んだきり放さない。  最初は暴れていたものの、猫は体の力を抜いた。それでも、勇人の手から力は抜けなかった。 「逃げないな?」 「にゃ」 「今さら、猫のふりをしても遅いぞ猫又。俺の言葉が分かってるんだろう?」 「ばればれだにゃー。勘弁な。あんたから逃げられる気がしないにゃ。だから手を離しつてほしいにゃ」 「逃げないなら」 「逃げないにゃだから離してにゃ」 「分かった」  勇人は猫又から手を離した。 「痛かったにゃ」 「それで、何であの女性をつけていたんだ?」 「それはーー」  翌日、勇人は依頼人の目の前に、人間姿の猫又とともに、現れた。  依頼者の折笠愛子は、女の姿を確認するなり怒りに顔を染めた。 「何で、この女を連れて来たんですか!?」 「落ち着いて下さい。彼女はあなたと話せれば、もうストーカー行為はしないと誓ってくれました。ですので、お話だけでも聞いて欲しいのです」  愛子は渋々ながらも「分かりました」と了承してくれた。 「ほら、猫又」 「にゃ」  勇人に返事するなり、女が煙のように消え、猫の姿になった。 「えっ、ミーちゃん?」  女が猫の姿になったとたん、愛子は戸惑いの表情を見せた。 「怖い思いをさせてごめんにゃ。実は最近猫又として覚醒して、どうしてもお礼を言いたかったにゃ。捨て猫だった私を拾って20年間愛情を注いでくれてありがとうにゃ。」 「こう言う訳なんです。納得していただけましたか?」 「ええ」 「……もし、愛子がいいのなら、これからも私に愛情を注いで、たまに話相手になって欲しいにゃ」 「もちろん、いいわよ」 「ありがとうにゃ」  猫又のミーは、飼い主の愛子の胸に飛び込んだ。 終わり
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