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大変身…!?
ついに舞踏会当日の夜。
わたしはまた小鳥に変身してシンデレラの部屋を覗いていた。
(このストーカー行為にもすっかり慣れたわね)
部屋の中では派手に着飾った義姉たちがシンデレラにまた嫌味を言っている。
「アンタは舞踏会なんて行かなくていいのよ! 家で大人しく留守番してなさい!」
「アンタは風邪を引いて寝込んでるってことにしておくから〜!」
「……ありがとうございます。大人しく家でお姉様たちのお帰りを待っています」
「ふん、アンタがちゃんと私たちの言うことを聞いてたら連れて行ってやってもよかったのに!」
「そうよ、アンタって本当に馬鹿なんだから!」
「……ごめんなさい。お気をつけて行ってきてください」
義姉たちの嫌味に耐え、シンデレラが健気に見送りの挨拶をしている間、わたしは義姉たちのドレスをくちばしで引き裂いてやりたい衝動をなんとか抑えながら窓辺でスタンバっていた。
そしてようやく義姉たちが出掛けた後、わたしはコンコンと窓ガラスをつついた。
「えっ、リュシー? こんな夜にどうしたの?」
シンデレラが窓を開けて出迎えてくれる。
わたしは羽を震わせてお礼を伝えると、部屋の中央へと降り立った。
いつものわたしらしからぬ行動にシンデレラが少し驚いたように目を見張る。
しかし驚くのはまだ早い。
だってこれから、さらに度肝を抜くようなことをしようとしているのだから。
「リュシー、こっちにおいで」
こちらへ近づこうとするシンデレラを片羽で制し、わたしはなるべく格好よく見えるようなポーズをとって変身の魔法を解除する。
すると、キラキラとした銀色の粒子を放ちながら、わたしは小鳥から元の人間の魔法使いの姿へと戻った。
「こんばんは、シンデレラ。この姿でははじめまして。わたしは魔法使いのリュシーよ」
優雅にお辞儀をして挨拶すると、シンデレラは元々大きな目をさらに大きく丸くさせた後、ふらりとよろめいてベッドの上に倒れ込んだ。
「ご、ごめんなさい、驚かせすぎちゃったわね……!」
「リュ、リュシーが……本当に魔法使いだったなんて……」
「うふふ、シンデレラったら鋭いからドキッとしちゃったわ」
「でも、どうしてこんなことを……?」
ふらふらしながら立ち上がろうとするシンデレラをそのままベッドに座らせ、わたしは今夜の作戦について説明する。
「えっ、私が舞踏会に参加して王子様と……!?」
「そうよ、わたしが魔法で綺麗なドレスとガラスの靴、カボチャの馬車を出して舞踏会に連れていってあげる。もちろん、その短く切られちゃった髪も直してあげるから安心して」
にっこり笑って安心安全のプランを案内するが、シンデレラの顔は浮かない。それどころか、両手をぶんぶんと振って勢いよく遠慮してきた。
「あの、気持ちはありがたいけれど、私は大丈夫だから……。王子様とだって結ばれるどころか私なんて──」
「そんなことない! あなたはとっても素敵な子よ! 毎日お姉さんたちにいじめられて、ちょっと自信を失っているだけ。さあ、わたしがその自信を取り戻してあげる!」
「で、でも……!」
遠慮するシンデレラに向かって、とびきりの力を込めて魔法の杖を一振りする。
(王都の最先端ファッションは履修済みよ! 今のトレンドは胸元ギリギリまで開いた肩出しドレス! カラーはシンデレラに似合うアイスブルーにして、髪色に合わせた金糸の刺繍もふんだんに!)
すると、ポンッという弾ける音とともに、綺麗なドレスに身を包んだ世にも美しいお姫様が現れた。
「まあっ! とっても綺麗よシンデレラ! 意外としっかりした肩幅に、意外とたくましい胸筋、それから意外とがっちりした上腕筋と前腕筋…………うん?」
おかしいな。
想像していたのは華奢で可憐でザ・お姫様な姿のシンデレラだったのに、実際に目の前にいるのは、肩を丸出しにして恥じらっている超絶美男子にしか見えない。
「……えっ、男……?」
思わず呟くと、シンデレラが布団で体を隠しながら、涙目でうなずいた。
「私、本当は男なんです……」
「えええええええ!!??」
二人きりの家に、わたしの絶叫が響いた。
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