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ドラゴンのシテは涙目で声がする方へ振り向くと、そこにはひ弱そうな緑色の素肌のひとりのゴブリンの姿があった。
「そんなに震えないでよ君、人間にこっ酷くいじめられただろ。
解ってるさ・・・」
ゴブリンはドラゴンのシテの方へ近付くと、そっとドラゴンのシテのぷっくりとしたお腹を抱き締めた。
「おお・・・よしよし・・・君も僕も同じ目にあったんだね・・・
解るよ、解る。」
ゴブリン族にもいじめられいたドラゴンのシテは最初は警戒していたものの、このゴブリンには別に敵意もなく、仲間になりたいんだと感じたのは、そのゴブリンの目から涙が流れてブルブル震えていた事を知ったからだ。
「ゴブリンさん。君は・・・ ?」
ドラゴンのシテは、お腹を抱きしめるゴブリンに話しかけた。
ゴブリンはボソッと言った。
「僕の名前は無い。何故なら、僕は人間によって親に死に別れてずっと人間にこき使われて生きてきたからです。
僕達ゴブリン族は、人間に虐げられています。
僕は人間どもに事ある事に、殴られ蹴られて・・・もう人間の居ない場所を探して彷徨って・・・
それでも、人間に虐められてた恐怖がフラッシュバックして・・・もう・・・!!」
ゴブリンは、常に震えていた。
ドラゴンのシテは思った。
おいらにしろ、このゴブリンにしろ、
何で人間は人間以外な奴には、暴力的な振る舞いをするんだろうか・・・?と。
ざっ!
向こうから、気配を感じた。
「おい!あれは退治依頼のある、街を荒らし回ってるドラゴンじゃねーか?」
「しかしこのドラゴンは弱々しいな。
一発で退治出来るだろうな。
それに、あのゴブリン。奴隷から逃げ出した奴じゃねーか?
しめしめ、一石二鳥だ!!」
その向こうから声が聞こえてきて、ドラゴンとゴブリンが振り向くと・・・
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