四月のバカ

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 なんと、両親も僕に借金の肩代わりを申し込むつもりだったらしい。家族三人、同じ家で暮らしているのに互いの経済状況を分かっていなかったのだ。  ふと父の薄い頭に目を向けてみると、ポリポリと掻いてる場所が赤くなり始めていた。それをぼんやり眺めながら、梅みたいな色だと感じていた。  パチンコ。競艇。競馬。競輪。それのみに止まらず、我が家は代々博打に呪われた家系だった。  祖父は馬のせいで代々所有していた広大な土地を手放し、家を借金のカタに持って行かれた。父は大のパチンコ狂いで我が家の本棚は必勝ガイドで埋め尽くされているし、僕はなけなしの金と暇さえあれば競輪場や競艇場に入り浸っている。父も僕も、まともな定職についたことは一度もなかった。おまけに母も御多分に洩れず、スロット狂いだ。 「スロットはね、ボタンがビンビンして画面がバリバリするから好きなの」  と、良くわからないことをしょっちゅう言っている。  テーブルの上に並べられた借用書を三人で覗き込みながら煙草を吸っていると、諦めを通り越して段々愉快な気分になって来る。ふぅっと浅く煙を吐いた母が笑っている。
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