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「ええっと、赤味噌でしょ、ウズラの卵、それから、カレー粉――。あと一つは、何だっけ?」  朝、玄関を出ようとしていた美湖に、母が買い物を頼んだ。  頼まれた物は、四つ。小学生じゃあるまいし、メモなんて必要ないと思っていたのだが、学校帰りに駅前のスーパーの入り口に立った途端、美湖の記憶は怪しくなった。  仕方がないので、スマホで確かめることにした。  そろそろ、妹の愛菜(まな)の保護者会も終わっているはずだ。美湖は、リュックからスマホを取り出し、急いでメッセージを入力した。 <赤味噌、ウズラの卵、カレー粉、あとは何?>  すぐに、母から返事がきた。 <コーヒーフィルター> 「ああ、そうだっけ! 今朝、『最後の一枚』って言ってたもんね!」  美湖は、スマホをコートのポケットに入れると、ほっとしながら店の中へ入っていった。  必要な物はすぐに見つかり、気になっていた新発売のチョコレートもかごの中へ入れた。レジをすませ、母に連絡を入れておくことにした。  スマホを取り出そうとポケットに手を入れたが――、ポケットの中には何もない! 「えっ!? うそ? スマホ、わたしのスマホ、どこ?」  美湖は、もう一度売り場に戻りスマホを探した。  味噌の棚、卵の冷蔵ケース、スパイスコーナー、コーヒー売り場を順番に見て回る。念のため、棚の下なども覗いた。  スマホはポケットに入れたのだから、どこかで落としたのに違いない。
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