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 千裕は先に来ていて、くじ引き待ちの長い列の中程に並んでいた。  手には、レシートを握っている。 「お待たせ! 遅くなって、ごめんね」 「買いたかった本がすぐに見つかったから、早めに来たんだ。気にしなくていいよ。それより、レシート。ちゃんと持ってきたか?」 「うん。少し早いけど、愛菜にクリスマスプレゼント買ったんだ。レシートは――」  レシートを取り出そうとポケットに手を入れたが、ポケットの中には何もない――。 「な、なんで? 絶対にポケットに入れたのに!?」  美湖が大きな声を出したので、列の前後の人々が、いぶかしげな視線を向けてきた。  美湖は小さく頭を下げながら、まずはバッグを開け財布を取り出した。  財布の中に、レシートはなかった。  次に、バッグのポケットを確かめた。外ポケットのファスナーも開けたが、やっぱりない。 「ごめん――。二度あることは、やっぱり三度あるんだね。見当たらない――」 「いいよ。俺が持っている分で、一回は引けるから」  そう言いながらレシートを広げていた千裕が、「えっ?」とつぶやいて目を丸くした。 「美湖、これ――」  千裕が差し出したのは、美湖がファンシーショップで受け取ったレシートだった。 「どういうこと?」 「俺にもわかんないよ! でも、ラッキーなのは確かだから、ほかにもいいことあるかもな!」  不思議がっているうちに、くじ引きの順番が回ってきた。  「二回引けます」と言われたので、一回目は千裕が回した。  皿の中へ、白い玉がころんと飛び出した。「はずれ」のポケットティッシュが渡された。  二回目は、「えいっ」と言いながら美湖が回した。  皿の中へ転がり出てきたのは、三等の青い玉だった――。
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