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6.研究員佐藤浩史は世界の平和を祈る
「今日は有意義な話ができました」
第ニ十七代サウザン合衆国大統領バラキ・コバマはそう言って右手を差し出した。
「今日の会談は両国にとって意味のあるものになりましたわ」
ノースリア共和国初の女性首相サッチーがコバマの右手をがっちり握る。
「これをお受け取り下さい」
コバマはスーツの内ポケットの中に大切にしまっていた便箋を取り出した。
「まあ、なんですの、これ?」
「ラブレターです」
「ほほほ、大統領は冗談がお好きですね」
「ははは、まあラブレターと言うのは冗談ですが、これは私が心を込めて記した手書きの親書です。これを読んで頂ければ我が国の真意が貴国に伝わると思います」
「わかりました。帰りの飛行機の中でじっくり読ませて頂きますわ」
サッチーが立ち去ると、大統領補佐官がコバマに近寄った。
「長く続いた南北冷戦にもようやく明るい兆しが見えてきましたな」
「大国同士が核のボタンに手を掛けて睨み合っている今の状態は非常に危うい。現状を打破するためには多少の譲歩は必要だ。それで世界平和が保たれるのなら安いものだ」
「さすがは大統領。その志の高さに敬意を表します」
午後のニュースは南北両首脳の会談が無事に終わった事を伝えていた。
「博士~、ニュース見ました?」
研究員佐藤浩史が飯田橋博士の方を見ると、博士は鼻から提灯を出して船を漕いでいた。
「もう~、こんないいニュース滅多にないのにぃ~」
だが、こうしてのんびりお昼寝出来るのも世界が平和だからである。
(どうかこのままずっと世界が平和でありますように)
佐藤浩史は心から世界の平和を祈った。
-了-
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