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2.女スナイパー西郷仁美は途方に暮れる
27階建てのビルの屋上に女は居た。
コードネーム”黒い雌豹”。全身黒ずくめの彼女は組織でも№1の凄腕スナイパーである。
十年来の相棒M16ライフルに弾丸を装填し、息を潜めてターゲットが現れるのを待つ。
(そろそろ指示書を確認しておくか)
今日これからここに来るのは、フルーティ王国使節団。ターゲットの可能性がある人物は3人に絞られる。
国家元首であるパイン国王、国王の側近で懐刀と言われているメロン男爵、そして国防大臣を務めるストロベリー中将。
ターゲットがこの三人の中の誰かなのは間違いない。
コートの内ポケットから指示書を出し、中身を確認して西郷は愕然とした。
(な、なにこれ? どういうこと??)
西郷が呆然としているとスマホが鳴った。
「ボス!?」
『あと5分で使節団がそっちに着く。準備は出来ているな』
「準備はできてますが、この指示書は一体なんですか?」
『ターゲットは指示書に書いてある通りだ。君の腕なら一発で仕留められるはずだ、何も問題あるまい』
「いやいやいや、こんな子供の落書きみたいな似顔絵じゃ誰かわからないから! ちゃんと名前書いてくださいボス!」
『何のことかわからんが、君の腕は信頼している。いつも通り金はスイス銀行の指定口座に振り込んでおくから安心したまえ』
「ちょっ、待ってボス!」
通話は切れた。
それにしても、なぜ今回に限ってターゲット指定が似顔絵なのか?
ボスは一体何を考えているのか?
(っていうか、この似顔絵ヘタすぎでしょ……)
幼稚園児が描いた”ぼくのおとうさん”みたいな絵を眺めながら、黒い雌豹は途方に暮れるしかなかった。
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