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4.草食系男子山内健二の恋は成就しない
人気のない午後の公園。
噴水の前のベンチには、英聖女学園の制服を着た黒髪の美女が座っている。
(来てくれた!)
山内健二は飛び上がって喜んだ。
ずっと憧れていた美少女、藤崎京香。今日こそはこの思いを伝えるのだ。
草食系男子の彼が一生分の勇気を振り絞った呼び出しに、彼女は応じてくれた。
「や、やあ、待った?」
彼女と話すとどうしても緊張してしまう。
「ううん、私も今来たところ。それより、大事な話ってなに?」
「こ、これを読んでください!」
健二は上着の胸ポケットから便箋を取り出し京香に手渡した。
一晩寝ずに書き上げた渾身のラブレター。これでフラれたらもうしょうがない。
便箋の中からメモ書きのようなものを取り出し、読み始める京香。
「なにこれ?」
訝し気な目で健二を睨むその顔には明らかに困惑が現れている。
「僕の気持ちです! どうかこの気持ち受け止めてください!」
「豚ひき肉200g、玉ねぎ中2個、玉子1パック……これがあなたの気持ちなの? 意味わかんない」
「へっ?」
「大事な話だなんて言うからドキドキしちゃったじゃない。私はそんなに暇じゃないの」
不機嫌そうな顔で歩き出してしまった京香に、健二は声を掛けることもできずに立ち尽くした。
どうやら彼の恋は成就しそうもない。
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