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5.女総長鬼龍院翔子のラブストーリーは突然に
榊原龍也の後ろには、都内最強の暴走族”銀龍”のメンバーが控えている、その数約五十。
龍也と対峙する鬼龍院翔子の背後では女暴走族”女帝”の面々が鉄パイプを片手に凄んでいる。その数大凡六十人。
些細なことから始まった抗争は徐々にエスカレートしていき、もはや全面戦争は避けられないところまで来てしまっている。
龍也は革ジャンのポケットの中に入れていた便箋を取り出し、翔子に渡した。
「なによこれ?」
「宣戦布告だ」
「へぇ……本気でやるつもりなんだ」
口元に笑みを浮かべながら書状を読み始める翔子。モデル並みのスタイルにアイドル顔負けの美貌。だがこの見た目に騙されてはいけない。過去に何十人もの男どもを病院送りにしてきた猛女なのだ。
書状を読む翔子の顔が徐々に緩み始める。
(ちっ、いつまで読んでやがんだ)
龍也は苛立ちを抑えきれない。
書いたのはたった二行。
”この書状をもって宣戦布告とする”
”おまえら全員ぶっ殺す!”
これだけである。
五秒で読めるはずだ。
数分間書状を読んでいた翔子が顔を上げた。気のせいか頬が赤くなっている。
「なるほど。恋は戦争だよね。あんたの宣戦布告、確かに受け取ったよ」
「恋? 何言ってんだおまえ?」
「もっと早く言ってくれれば良かったのに。あんたのことは気に入ってたんだから」
「へ?」
龍也の肘に腕を絡ませてくる翔子、目がウルウルしている。
「あたしだって女だよ。あんな熱烈な告白されたらグラッときちまうよ」
「え? えええ!?」
呆然とする龍也に銀龍の幹部が近寄っていく。
「そういうことになってたんですか。総長も人が悪いな。俺達にも黙ってるなんて」
「いやいやいや、そうじゃなくて」
「なに照れてるんすか。めでたいことじゃないっすか。これで抗争も終わるし、八方丸く収まりますぜ」
翔子の後ろでは女帝のメンバーがひゅーひゅーと口笛を鳴らしている。
この日から、都内最強の暴走族”銀龍”と関東最大の女暴走族”女帝”は無二の盟友になるのである。
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