5.女総長鬼龍院翔子のラブストーリーは突然に

1/1
前へ
/6ページ
次へ

5.女総長鬼龍院翔子のラブストーリーは突然に

 榊原龍也の後ろには、都内最強の暴走族”銀龍(シルバードラゴン)”のメンバーが控えている、その数約五十。  龍也と対峙する鬼龍院翔子の背後では女暴走族(レディース)”女帝”の面々が鉄パイプを片手に凄んでいる。その数大凡六十人。  些細なことから始まった抗争は徐々にエスカレートしていき、もはや全面戦争は避けられないところまで来てしまっている。  龍也は革ジャンのポケットの中に入れていた便箋を取り出し、翔子に渡した。 「なによこれ?」 「宣戦布告だ」 「へぇ……本気でやるつもりなんだ」  口元に笑みを浮かべながら書状を読み始める翔子。モデル並みのスタイルにアイドル顔負けの美貌。だがこの見た目に騙されてはいけない。過去に何十人もの男どもを病院送りにしてきた猛女なのだ。  書状を読む翔子の顔が徐々に緩み始める。 (ちっ、いつまで読んでやがんだ)  龍也は苛立ちを抑えきれない。  書いたのはたった二行。  ”この書状をもって宣戦布告とする”  ”おまえら全員ぶっ殺す!”  これだけである。  五秒で読めるはずだ。  数分間書状を読んでいた翔子が顔を上げた。気のせいか頬が赤くなっている。 「なるほど。恋は戦争だよね。あんたの宣戦布告(ラブレター)、確かに受け取ったよ」 「恋? 何言ってんだおまえ?」 「もっと早く言ってくれれば良かったのに。あんたのことは気に入ってたんだから」 「へ?」  龍也の肘に腕を絡ませてくる翔子、目がウルウルしている。 「あたしだって女だよ。あんな熱烈な告白されたらグラッときちまうよ」 「え? えええ!?」  呆然とする龍也に銀龍の幹部が近寄っていく。 「そういうことになってたんですか。総長も人が悪いな。俺達にも黙ってるなんて」 「いやいやいや、そうじゃなくて」 「なに照れてるんすか。めでたいことじゃないっすか。これで抗争も終わるし、八方丸く収まりますぜ」  翔子の後ろでは女帝のメンバーがひゅーひゅーと口笛を鳴らしている。  この日から、都内最強の暴走族”銀龍(シルバードラゴン)”と関東最大の女暴走族(レディース)”女帝”は無二の盟友になるのである。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加