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【1.5年前ー香田瑞樹&月島花火】
「月島さんっ、記録済んだの?」
ステーションでオーダーを入力していたら、抑えた口調ででも十分迫力のある声で誰かが怒られていた。声のした方へ向こうとしたら、
「ああ悪いけど、何かホッとするよな。俺たち以外に叱られてるやつがいるって」
同時にローテしている鎌田が耳打ちしてきた。
「まあな」
苦笑する。
二年目になって去年よりは随分マシになったとは言え、研修医は病棟のお荷物以外の何物でもない。者、ですらないのだ。疑わしそうに見られ、溜息をつかれ、煩そうにされる。挙句声を上げる上級医に当たることも多々ある。
「あー、早く専門行きてー」
そう言えば鎌田は外科志望だった。
「お前もそう思うだろ? 早く整形行きたいってさ」
「いや、そうでもない。全科巡っとかないと却って怖いな。見落としとか。あと病院での動き方とか」
はいはい、お前は昔っから優等生だもんなと肩をバンバン叩かれている。
鎌田とは医学部時代からずっと一緒だ。すっかり見切りをつけようとしていたテニスも、結局こいつに引っ張られて体育会(医学部のだけれど)でやる羽目になった。はい、お前どう見てもキャプテンねと言われて、結局中学時代からずっともう慣れ親しんでいる部長職に就いた。高校で終わりにしようと思っていたのに。
ーー香田くんのテニス、大好きだった。憧れ――
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